麻酔器の耐用年数について

治療用機器

麻酔器に限らず、医療機器には少しわかりづらい複数の「耐用年数」があります。大きく分けて三つ「税法上の耐用年数」、「薬事法上の耐用年数」、「麻酔器の寿命」です。ここでは、それぞれの「耐用年数」について説明し、実際の「麻酔器の寿命」はどの時点であるべきなのかを解説していきたいと思います。

「税法上の耐用年数」とは

税務署が決めた「耐用年数」のことです。麻酔器などの医療機器には、償却資産税が課税されます。このため医療機関の経理上では、税務署が決めた耐用年数にあわせて医療機器の減価償却が行われ決算されるのです。

この「耐用年数」は、税務署が税金を徴収する基準として作られるため、実際の医療機器の状態とは異なることもあります。

「薬事法上の耐用年数」とは

医療機器の製造販売業者が決めた「耐用年数」のことです。これは、医療機器の長期間使用による安全性確保のため、製造販売業者は添付文書などに、その「耐用年数」を記載せよと、厚生労働省が行政通知を発出したものです。

この「耐用年数」は日常点検・保守点検・予防保守が確実に実施されることを前提にして、決められています。いわば理想的な「耐用年数」です。ところが現実的にみると、多忙な現場では理想論は通用せず、複雑な点検を実施する人材の確保の難しさや、技術力の維持には限界もあるようです。

「麻酔器の寿命」とは

実際の「麻酔器の寿命」とはどの時点のことを指すのでしょうか。麻酔器を構成する三つの部分をそれぞれ見ていきたいと思います。

麻酔ガス供給装置

この部分は比較的寿命の長い部品が多く、保守性や供給の安定に優れており、部品が調達できないことで、寿命に至るということは少ないといえるでしょう。

麻酔ガス供給装置の中には気化器というものがあります。気化器の主要部材である金属は精密な切削加工が多く用いられ、気密性も重視されます。
頻繁に操作される濃度調節部は、摩耗等による寸法変化、ゴミの蓄積などにより劣化の可能性があるので定期的な点検とメンテナンスが不可欠です。

吸入麻酔薬デスフルランについては、 電気を用いた温度と圧力の制御が欠かせません。 このためにデスフルラン用気化器は高精度の機械加工部品に加え、複数のセンサやヒータなど電気部品と電子制御回路によって構成されています。従ってデスフルラン気化器の寿命には、電気部品の交換や供給が大きな影響を与えることになります。

麻酔呼吸回路

この部分は二酸化炭素吸収装置、キャニスタが装備されたものが多く、機械部品で構成されています。この部分は気密性が重要であり、Oリング、ゴム製パッキンなどのシール部品が多用されており、これらには一定の寿命があるため、定期交換部品に設定されます。

揮発性麻酔薬は特にプラスチック部品を脆弱化させ、ひび割れを発生させることも少なくないので、これらは通常保守部品として備蓄されます。

これらの多くが専用設計された部品であり一般市場で購入することができず、そのメーカーからしか供給できません。これらの部品の供給途絶が、麻酔器の寿命を決定する場合もあり得ます。

モニタリング機器

モニタリン グ機器を構成するのは、センサ、分析ソフト、 表示ソフト、ディスプレイなどです。

麻酔ガスセンサなどは主に医療用に開発された専用のもので、代替部品はなく、高価であり、長期間の備蓄もできません。この部品の交換費用が、麻酔器自体の寿命に見合ったものか?バランスを考える必要があるといえるでしょう。

また液晶ディスプレイなどは、一般産業用途に開発製造されたものが使用され、高価で、モデルチェンジも頻繁であり保守部品の確保には十分な計画性が必要となります。

まとめ

「麻酔器の寿命」を考えるとき、ただ各部品の寿命を考えるだけではなく、その価格、調達の難易度、備蓄の難易度、そして価格に見合う効果があるのか?も考慮に入れる必要があります。

麻酔器の性能も日々進歩しており、現行の機種では対応できないことも、新機種では可能ということもあります。高価な部品代を払って現行機種を維持するのか?否か?

この決定を下すには病院の経営状況や経営方針なども影響してくるでしょう。ただ一つ言えるのは、実際の「麻酔器の寿命」は、理想的である「薬事法上の耐用年数」の範囲内であるべき、ということではないでしょうか?

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