人工呼吸器の設定は正常値を基に導入する

治療用機器

人工呼吸器の設定を行うには、患者の状態によって導入方法は異なりますが、基本設定を参考にした数値を正常値として扱います。今回は、人工呼吸器の初期設定における正常値につて紹介します。

人工呼吸器の使用目的

人工呼吸器の使用は、重篤な患者や呼吸器の補助によって自発呼吸の改善をはかる事にあります。具体的には、酸素化の改善を行う事、換気の改善を行う事、呼吸仕事量の軽減をはかる、3つの内容になっています。

1.肺の酸素化の改善
呼吸器を使用する事によって、体内の酸素化を全体にいきわたるようにします。血液内の酸欠による虚血で血流を妨げ、心臓や脳に負担をかけて重篤な症状におちいる原因となるので、その進行を軽減させます。組織虚血によって敗血症などにならないようにする為に、肺への酸素投与でヘモグロビン・酸素結合率を高めています。

2.換気の改善とCO2の排泄
患者の状態に合わせて、CO2の排泄と換気補助を適切に使用する事も役割の1つになります。呼吸困難な場合に息を吸う為の呼吸補助筋を動かしたり、息を吐く為の内肋間筋や腹筋などを動かしたりする「努力呼吸」の補助を行います。

呼気時における正常な場合の安静呼吸では常に陰圧を示し、努力呼吸では胸腔内は陽圧を示しています。呼吸仕事量を軽減する為には、圧補助換気などの換気補助を行う事で、患者に対する交感神経活性が、全身の働きを高める事や興奮状態になる事を軽減する役割があります。

人工呼吸器の導入条件と正常値

患者の体格による条件や患者の症状である病態によっても異なりますが、基本的な設定となるのは、60kg以上の成人の体重を想定して初期の設定値を導入しています。

「パラメーターと初期設定値」

換気モード=SIMV(呼吸不全の患者に対する一般的な換気法で、同期的間欠的強制呼吸)
FiO2(吸入酸素濃度)=1.0
一回換気量=450ml
PEEP=5cmH2O
(呼気時に肺胞虚脱を防ぎ、気道を開放や、膨らみにくい肺胞にも均等にガスを入れる)
ピーク気道内圧=40cmH2O以下
吸気フロー=60l/min
呼吸数=15回/min
PS圧規定=10cmH2O
トリガー感度=-1~-2cmH2Oまたは2~3l/min
呼気・吸気比=1:1~3
アラーム設定の気道内圧上限=40cmH2O以下
アラーム設定の気道内圧下限=10cmH2O
呼吸回数上限=30回/min
換気量下限=設定換気量の60%です。

人工呼吸器の導入条件の正常値

「パラメーター:呼吸器導入基準:正常値」
呼吸回数(回/分)=5回以下または35回以上=正常値10~20回
1回換気量(ml/kg)=3以下=正常値8~12
肺活量(ml/kg)=10以下=正常値67~75
最大吸気圧(cmH2O)=20以下=正常値75~100
PaO2(mmHg)動脈血酸素分圧=60以下(FiO2:0.6)=正常値75~100(FiO2:0.21)
PaCO2(mmHg)動脈血二酸化炭素分圧=60以上=正常値35~45
※1回換気量と肺活量の求め方は、患者の体重で割る事で求めます。
※FiO2=0.21は通常の空気で、FiO2=0.6は吸入ガスの60%が酸素です。

人工呼吸器の換気モード

1.強制換気モード
患者さんの自発呼吸がない場合に使用します。

2.補助換気モード
自発呼吸がある場合や、自発呼吸がもどってきた場合に使用します。

まとめ

人工呼吸器の設定を行う場合には、基本設定を把握する事と導入条件と正常値を比較してから、患者さんの状態に合わせて安全に使用しましょう。

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