心臓に代わるペースメーカーは心電図診断に重要な医療器具!

治療用機器

心臓は人間の中枢的位置にあり、周期的な拍動によって血液循環の維持と調節に関して大変重要な器官です。そのため、異常をきたすと生命に関わる重大な要因となります。今回は、心電図とペースメーカーについて見ていきましょう。

心電図で診断が可能な疾患

〇不整脈と伝導障害 ⇒ 頻脈性不整脈(脈が多くなる不整脈)と徐脈性不整脈(少なくなる不整脈)で、刺激伝導系のメカニズムに障害をきたします。

〇心筋の虚血障害 ⇒ 心臓の筋肉(心筋)に栄養や酸素を供給している冠動脈が、動脈硬化や血栓などによって狭くなる、あるいは詰まることによって(虚血することで)生じる疾患障害です。

〇心房・心室の肥大 ⇒ 心室肥大がなんらかの原因で左心室の壁が厚くなる症状で、細胞が自ら大きくなることに伴って、細胞と細胞の間にある繊維組織が増えて結果的に心筋が徐々に厚くなって動脈硬化になり血管を狭めてしまい、虚血性心疾患につながる危険性があります。

〇電解質異常 ⇒ 体液の中に存在する電解質のバランスが崩れている状態のことで、正しいバランスを保てなければ体が酸性、アルカリ性に傾いてしまい意識障害や傾眠、嘔吐、痙攣、脱力などが起こります。

電気刺激の流れと心臓収縮の関係性

心臓収縮時に発生する洞房結節で生じた電気エネルギーは、洞結節→心房→房室結節→心室の順で流れてP波、QRS波、T波として心電図に現れます。

【電気信号P波、QRS波、T波の関係】
洞結節で電気刺激が生まれ興奮が小さいため心電図には現れません。

●P波 ⇒ 洞房結節で発生した電気刺激が心房の心筋に伝わる
●PQ時間 ⇒ 房室結節に電気刺激が伝わる
●QRS波 ⇒ 心室に電気が伝わり、心筋が収縮する
●T波 ⇒ 電気刺激が一時的に途絶えて、心臓が弛緩する
●U波 ⇒ 心臓が静止状態に戻る

ペースメーカー

ペースメーカーは、洞不全症候群や房室ブロックなど重症の徐脈性不整脈の治療などに利用され、人工的に心臓を興奮させ徐脈性不整脈による洞律の異常を補正します。緊急時に一時的に利用される体外式と体内式(胸部や腹部に植え込んで利用する)の種類があり、緊急時には体内式を利用します。

ペースメーカーは、手術室や心臓カテーテル検査室で、局所麻酔で実施されます。鎖骨皮膚下にペースメーカーを挿入するための空間を作り、前胸部に植え込まれ鎖骨下静脈または腋窩静脈から、ペースメーカー本体と心臓の電気信号を繋ぐリード線を挿入します。

〇シングルチャンバ ⇒ 本体から使用するリード線1本で、心房又は心室のいずれかを監視する役割があります。

〇デュアルチャンバ ⇒ 2本のリード線を使用して右心房および右心室に留置し、洞結節から送られる信号が遅い状態の患者や房室ブロックなどの問題があれば、固定されたリード線の位置をX線透視と心臓の電気情報を適切な場所へ調整し、心収縮のタイミングのずれを補正して正常な収縮タイミングを回復させる事ができます。

ペースメーカーの設定と心電図の関係

心電図の監視役割と心臓の働きを監視する為のもので、異常がある場合の適切な対応や心臓の働きを補助する為の機能をもちます。心臓のリズムを整え、電気的な命令を発して心臓の働きを助けます。

【ベーシングモードの設定】
ペースメーカーの設定に使われているのはVVI、VDD、DDDです。

●AAI ⇒ 頭文字の組み合わせを示しています。心房においてペーシングとセンシングの設定が行われ、心臓の収縮を感知してペースメーカーに刺激が抑制されます。

●VVI ⇒ 設定を心室だけで行います。機器が心臓の自発収縮を感知することで、本体に対する刺激が抑制され、徐脈性心房細動で適応します。

●VDD ⇒ 心室のみの設定で、心房・心室の両方でセンシングをおこないます。心房収縮の感知に同期し、心室のペーシングを心室収縮が感知したら機器の刺激が抑制されて、洞結節の働きが正常な房室ブロックに適応します。

●DDD ⇒ 心房と心室両方の設定が可能なモードで、心房と心室の収縮状況に応じて刺激します。

【ペーシング部位の表示】
機器本体が電気的に刺激する部位をA(心房)、V(心室)、I(抑制)、T(同期)、D(両方)、O(なし)頭文字によって指示します。

〇心臓を刺激する部位のペーシング部位のAは心房、Vが心室、Dの両方です。
〇刺激を関知するセンシング部位のAが心房でVが心室、Dが両方でOが感知機能なしです。
〇心臓の興奮を制御する作動様式をIで示し、Tが心臓の興奮を感知し同期を行います。Dは刺激抑制と同期を併せてOは感知機能なしです。

まとめ

ペースメーカーは、心電図本体の異常を示す関係や監視の役割があり、患者によって設定が異なりますので適切なモードを選ぶ必要があります。そのため、使用する場合の設定や注意事項を把握しておく事が大変重要です。

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