レーザーメスの波長について

治療用機器

医療用のレーザーメスには、特定の波長が利用されます。波長の考え方には高校程度の物理学の知識が必要ですが、理屈は意外と簡単です。今回は波長のメカニズムを引き合いに、レーザーメスの仕組みについて解説致します。

レーザーメスについて

特定の波長のレーザー光を照射し、外科手術などを行う装置がレーザーメスです。局所的にエネルギーを出力することが可能なことから、癌や腫瘍などの施術に効果的とされています。またその特性によって、切創と同時に熱で患部を閉じることも可能です。

通常の金属製メスによる手術と比較し、施術におけるダメージも少なく、術後の回復も早いのが特徴です。痛みも軽くなり、傷跡もよりやわらげることができます。現在でもより性能の高いレーザーメスの研究開発が行われています。

波長とは?

いわゆる「波長」とは、そもそもは物理学の用語であり、簡単に言えば「波の振幅1周期分の長さ」と定義されています。「1秒間あたりに生じる波の数」と定義される「周波数」とも密接に関係しており、波長が大きくなれば周波数は小さくなるという関連性があります。

「光」とは電磁波の一種であり、本質的には電波などと同じ括りに属します。波長の違いによってそれぞれの電磁波に異なる特徴が現れ、電波・レーザー光を含む光・放射線などに区別されるわけです。

電磁波の種類は、「帯域」という波長の範囲によって決まります。同じ帯域にある波は互いに干渉し合うこととなります。たとえば病院の中で、携帯電話の使用が禁止されている区画があるのは、携帯電話の電波が、医療機器で使用される電波に干渉してしまうのを防ぐためでもあります。

波の利用

レーザー光に限らず、電気や電波、インターネットの回線速度など、波長の考え方はいたるところに存在するのです。一方で、波は波長に応じたエネルギーを持ちます。正確には波の高さや形状なども作用します。

たとえば電波の場合、波長が大きくなればより遠くへ飛ばすことができますが、エネルギーは小さくなってしまいます。レーザー光の場合、同じ帯域にある波長の光について、その進む向きと波の位相を同一に設定することで、局所的にパワーのある波を作り出しているのです。

レーザーメスの波長について

レーザーメスに使用される波長は、中赤外線から遠赤外線の帯域幅を持っており、特徴として上記のように、局所的な出力を可能にします。パワーは大きく、かつ精密な手術ができるように工夫されているのです。

また、この波長は水分に吸収されやすいという特性があり、たとえば切開をしながら同時に傷口を閉じる事で、血液の流出を最小限に抑えることができます。さらには出力を調整することで、衝撃波を出すこともでき、硬い組織でも簡単に切断することを可能にしています。

このようにレーザーメスにおける波長の原理は、物理現象の効果を生かした技術であり、今後もさらなる性能のアップが期待されます。仕組みを理解しておけば、現場での取り扱いや生かし方への参考になるでしょう。

まとめ

レーザーメスの波長について解説いたしました。仕組みを簡単にでも押さえておけば、より医療への理解が高まります。取り扱う機器の特徴をしっかりと把握し、安全に業務を遂行できる様にしましょう。

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