活動電位とは?~心電図を読むための基礎知識~

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はじめに

心臓を構成している筋肉は「心筋」と呼ばれ、この心筋は「心筋細胞」という名の細胞が集まってできています。
この心筋細胞で起こっている電気的な活動が、協調的で規則正しい心臓の動きを実現しており、心電図はこれら個々の心筋細胞の電気的な活動をまとめてあらわしたものです。
そして、この電気的な活動を引き起こしているのが細胞の「活動電位」です。
今回はこの「活動電位」について見ていきましょう。

活動電位とは

活動電位とは何かを知るために、細胞内外でイオンの流入・流出によって起こる電気的な状態の変化を見ていきましょう。

静止膜電位

心筋細胞は、ほかの細胞と同様にそのひとつひとつが細胞膜と呼ばれる膜で外側と区切られています。
イオンの濃度を見てみると、細胞の内側では外側と比べてカリウムの濃度が高く、ナトリウムの濃度が低い状況となっています。
これらのイオンの働きにより、通常の状態では細胞の内側は外側に比べて電気的に陰性な状態となっています。
この状態は「静止膜電位」と呼ばれます。

イオンの流入出と電位の変化

ところで、細胞膜にはイオンチャンネルと呼ばれるイオンの通り道があり、ふつうの状態ではイオンを通しません。
しかし、となりあっている細胞から電気的な興奮が伝えられると、ナトリウムを通すイオンチャンネルが開き、細胞の内側へナトリウムが流入してきます。
すると、ナトリウムはプラスの電気を帯びた陽イオンであるため、細胞の内側の電位が上がることになります。
この状態は「脱分極」と呼ばれます。

なお、なぜ「脱分極」と呼ばれるのかといえば、先ほど説明したように、静止膜電位は電気的に陰性な状態となっています。
電気的に陰性ということは、電圧が0から離れている、つまり分極している状態です。
その状態から細胞の内側の電位が上がるということは、電圧が0に近づくということであり、それは分極を脱するということになるので「脱分極」と呼ばれるのです。

話を戻して、ナトリウムの流入により細胞の内側の電位が上昇すると、カルシウムイオンチャンネルとカリウムイオンチャンネルも活性化されて開くことになります。
このとき、カルシウム(陽イオン)は細胞の外側から内側へ、カリウム(陽イオン)は細胞の内側から外側へと流れるのですが、両者はほぼ釣り合った状態となるため、それにより細胞の内側の電位はしばらくの間プラスの状態を保つこととなります。
その後、カルシウムの流入が減少していく一方で、カリウムの流出が徐々に増加していくので細胞の内側の電位は下がっていき、もとの静止膜電位へと戻ることになります。

最後に

以上のような細胞の内側と外側で起こる一連の電気的な変化を「活動電位」といいます。
このような活動電位(興奮)がひとつの心筋細胞からとなりあっている次の細胞へと次々に伝えられていくことで、心筋の収縮が起こり、心臓の動きが実現されるとともに心電図の波形となって表れるわけです。
ちなみに「活動電位」について知っておくことは、脳内の神経細胞の働きや脳波を理解することにも役立ちます。

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