脳波計の時定数とは?

生体現象測定記録・監視用機器

はじめに

脳波計で測定される脳波は、大脳皮質における神経細胞(ニューロン)の電気的活動を反映したものであり、周波数によってα波(8~13Hz)、β波(14Hz以上)、θ波(4~7Hz)、δ波(4Hz未満)の4種類に分類されています。
ところで、「脳波計の時定数って何ですか?」と聞かれたら、説明できるでしょうか?
専門家でない限りは、なかなか難しいですよね。
今回は、この「脳波計の時定数」について考えてみることにしましょう。

脳波計の時定数って何?

脳波測定の際、さまざまなノイズ(アーチファクト)が混入してきます。
ノイズの要因としては、商用の交流電源や脳波計そのものから発せられるものなど環境要因によるものと、患者さんの身体の活動に伴うものとがあります。

後者の要因としては、咳をしたり、緊張などによって身体の一部に力が入っている場合の筋肉の収縮に伴う電気的活動(筋電図)、あるいは呼吸や発汗によるものなどが存在します。

これらのノイズを遮断するための手段として、脳波計には高周波フィルタと低周波フィルタが設けられています。
身体活動に伴うノイズのうち、筋電図に関しては、周波数が比較的高く、高周波フィルタで対応します。
一方で、呼吸や発汗に伴うノイズは周波数が低く、低周波フィルタによって対応するのですが、この低周波フィルタで「どの程度の周波数を遮断するか」を決めるのに関係してくるのが「時定数」なのです。
ちなみに、低周波フィルタは時定数回路とも呼ばれます。

一般的に、脳波計の時定数は0.3秒となっています。
時定数をt、遮断される周波数の上限をfとすると、両者の間には

f=1/2πt

という関係がありますので、時定数が0.3なら、f=0.471となります。
つまり約0.5Hz未満の周波数は遮断されることになるわけです。

なお、時定数を下げれば下げるほど、脳波は見やすくなりますが、小さな子供や脳の機能が低下している人の場合には、より周波数の低い脳波が多くなっていることも珍しくありません。
したがって、脳波を見やすくするため安易に脳波計の時定数を下げればいい、というわけではないようです。

最後に

脳波で表現される脳内の電気的活動そのものは非常に微弱なものであるため、脳波計では差動増幅器と呼ばれるいわゆるアンプのような装置で脳波が増幅されます。
その際、上で見たような低周波フィルタや高周波フィルタといったフィルタが働きますので、実際に増幅されるのは0.5~30Hzの範囲に収まる信号、つまり脳波と考えられる信号のみということになります。
そして、できるだけ純粋に脳波のみが抽出されるよう、さらに他の方法によってもノイズを取り除く努力がなされているのです。

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