MRIの脂肪抑制について

生体現象測定記録・監視用機器

磁気の力を使うことによって、身体の内部の様子を見ることができるMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置。日本語では「磁気共鳴画像」と呼ばれます。このMRIを使用するに際、「脂肪抑制」という方法が大きな役割を果たしています。どのようなものなのか、以下で見ていくことにしましょう。

なぜ脂肪抑制が必要なのか?

MRIによって身体内部の画像を得る原理は、どのようになっているのでしょうか?脂肪抑制について知るためには、まずこの点を理解しておかなければなりません。

普通、物質内部の水素原子はバラバラの方向を向いた状態で存在しています。ところが、物質を強い磁場の中に置いて特定の周波数の電波を当てると、この水素原子は一斉に同一の方向へ向きをそろえます。これが磁気共鳴と呼ばれる現象です。

その後、電波を当てるのをやめると、水素原子はまた元の向きへと戻っていきます。ただ、その戻る速度は原子が置かれている環境によって異なります。簡単に言えば、この速度の違いを信号化し、それを画像にするというのがMRIの原理なのです。

ところで、人体内に存在する水素原子のほとんどは、「水」と「脂肪」の中に含まれています。

そして、体内の腫瘍や出血の状態をMRI画像に映し出すためには、「水」のほうに含まれる水素原子の情報を得る必要があります。つまり「脂肪」に含まれる水素原子の信号は抑制する必要があるのです。このための方法が「脂肪抑制」というわけです。

脂肪抑制の種類

脂肪抑制にはいくつかの異なる手法があります。

選択的脂肪抑制法

CHESS法とも呼ばれます。水に含まれる水素原子と、脂肪に含まれる水素原子では、磁気共鳴の周波数が異なります。この周波数の違いを利用して、脂肪中の水素原子からの信号を抑制する方法です。

STIR法

電波を当てるのをやめたときに水素原子が元の向きへとの戻るのにかかる時間を緩和時間と言います。これには「縦緩和時間」と「横緩和時間」の2種類が存在します。水に含まれる水素原子と脂肪に含まれる水素原子では、前者の「縦緩和時間」に差があります。

この時間差を利用して、脂肪中の水素原子からの信号を抑制する方法です。

位相差を利用した方法

磁気共鳴の周波数が異なる場合には、原子核が運動する速さ(スピン速度)にも違いが生まれます。この速度差が原因となって生じる位相差を計算処理することにより、MRIの画像を得る方法もあります。

まとめ

以前は、設備の整った大病院にいかないとMRIを使った検査を受けることができませんでした。しかし、最近では装置の普及が進み身近な医療機関でも受けることができるようになっています。現在の医療現場において、MRIが診断や検査に欠かせない医療機器となってきていることの証明と言えるでしょう。

このMRIを利用するために欠かせない重要な役割を担っているのが、今回紹介した「脂肪抑制」なのです。

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