拡散強調MRIについて

生体現象測定記録・監視用機器

MRI画像とひとくちに言っても、その撮影方法には数種類のやり方があり、撮影方法によって画像の見え方が変わってきます。今回はいくつかの撮影方法を紹介し、その中でも「拡散強調画像」に焦点を当てて説明していきたいと思います。

MRIの基本的な原理

人の細胞には原子核があり、その中には磁石の成分(原子核スピン)があります。自然の状態ではこの磁石はいろいろな方向を向いているので、磁力は相殺されゼロになります。

しかし、MRI装置の磁場(静磁場)に置かれると、原子核スピンの向きがある程度揃います。そこにある周波数の電波を当てると、それに共鳴した原子核スピンは静磁場の向きの方向に歳差運動(コマのような運動)を行います。

電波を止めると原子核スピンは歳差運動を止めますが、組織ごとに時間差が出てきます。(緩和時間)

この時間差を検出することで、時間差がコントラストになって画像に表され体内の様子を知ることができるわけです。

いろいろな撮影方法

現在行われている撮影方法をいくつか紹介します。

〇「T1強調像」
緩和時間には縦と横がありT1は縦緩和時間を強調した画像で、脳内出血や硬膜外血腫などの出血性病変を見つけるのに優れています。

〇「T2強調像」
T2は緩和時間の横を強調した画像で、神経鞘腫、海綿状血管腫、軟骨腫などの発見に優れています。

〇「プロトン密度強調像」
T1とT2の影響を可能な限り消し、プロトン(水素原子)の量を際立たせた画像で、くも膜下出血の検出などに有効です。また、膝関節の半月板や軟骨損傷などを見るのにも有用です。

〇「FLAIR像」
T2強調画像から水分子の信号をなくし、その他の組織の違いを明確にした画像で、脳溝や脳室に接する病変に有効とされています。

〇「拡散強調像」
水分子の動きやすさを反映した画像で、CTで検出できない超急性期、急性期の脳梗塞に非常に有効で、救急医療で主に用いられています。

拡散強調MRIの特徴

拡散強調MRI画像は、がん治療においても広く使われています。
その理由として、従来のMRI撮影と同時に撮影可能で、放射線被曝もなく、検査前後の安静待機も必要がなく、解剖学的情報に加え、悪性度といった質的な診断にも有効であることが挙げられます。

まとめ

一口にMRI画像といっても、いろいろあることが理解できたと思います。特に頭部のMRI画像撮影時にはルーチンがあり、「T2強調画像」「T1強調画像」「FLAIR像」の順に撮影されることが基本です。それに必要であれば追加で撮影されるのが、「拡散強調画像」やここでは触れていませんが「MRアンギオグラフィー」「T2スター強調画像」などがあります。

「拡散強調画像」の特徴は何と言ってもがん治療に有効だということです。特に前立腺がんの治療には欠かすことができず、生体検査の部位の特定、治療法の選択などに優れています。

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