ペースメーカ及びICD患者のx線診断装置使用時における注意事項とは?

生体現象測定記録・監視用機器

ペースメーカやICD(植込み型除細動器)の本体にx線診断装置によるx線束が照射されると本体の機能に「オーバーセンシング」と呼ばれる悪影響を及ぼす危険があるとの報告がされています。

○オーバーセンシングとは?
ペースメーカやICDにはペーシング機能とセンシング機能が搭載されています。
ペーシング機能とは設定した脈拍数よりも自己脈が少ない場合に電極刺激(ペーシング)を与えて脈拍数を調整する機能です。
一方でセンシング機能とは、設定した脈拍数よりも自己脈が多い場合に電極刺激を抑制して脈拍数を調整する機能です。
この2つの機能が相互に働くことにより心臓の動きを正常に保ちます。
オーバーセンシングとは、何らかの原因によりペースメーカやICD本体がノイズ等の自己脈以外の電極刺激を感知してしまい電極刺激の抑制が過剰に働いてしまうことをいいます。
オーバーセンシングが起こっている間は電極刺激が行われない状態となり、脈拍数の減少や脈が飛んでしまうといった症状が現れます。
ペースメーカは自覚症状としては動悸やめまい、ICDはこれらの自覚症状に加えて不要な頻脈治療に伴う疼痛や不整脈の誘発のリスクがあります。
この現象によるペースメーカ及びICDの機器自体の破壊はないとされています。

○オーバーセンシングの原因
x線束がペースメーカ等の増幅回路(半導体)に照射されると光電効果(物質に光を照射すると電子が物質の表面から放出される現象)が発生します。
この不要な電子によって心電図増幅器回路が増幅してオーバーセンシングが起こると考えられています。
オーバーセンシングはペースメーカ及びICD本体にx線束が照射されている間に起こり、リード線に照射しても影響はありません。
現在ではどのメーカーのx線診断装置でもこの現象が起こる可能性があるといわれています。

○ペースメーカ及びICD植え込み後はx線診断装置による検査はできないのか?
ペースメーカ及びICDの本体自体に直接x線束が掛からない状態であれば検査は可能です。
患者様の体位を工夫してx線照射部位から外すことができれば問題はありません。
それが難しいのであれば固定ペーシング機能を設定して脈拍を観察しながら検査を行うか、ICDにおいては頻脈検出機能をオフにしておくという方法があります。

○x線診断装置を使用する際の注意事項
x線診断装置を使用する際にはペースメーカ及びICD植え込み術を施行されていないか必ず確認をしましょう。

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