麻酔器使用の目的とは

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手術など患者さんに過大な苦痛を与えうる医療行為を行う際に麻酔が使用されます。とくに全身麻酔を扱う場合には麻酔器が用いられますが、いったいどのような目的があってそうなっているのでしょうか。麻酔器の仕組みなどと照らし合わせながら確認していきたいと思います。

麻酔とは

麻酔とは、薬物を用いて痛覚などの感覚を失わせ、通常では苦痛のあまり耐えられない医療措置を可能とする手段です。麻酔の種類は4通りに分類でき、その分類によって無感覚状態以外にも、意識を失わせる昏睡や、緊張などによる筋肉の硬化を取り除く筋弛緩の効果が付加されます。
具体的な麻酔の種類とその効果は以下の通りです。

・局所麻酔:身体の一部のみを無感覚状態にする。
・静脈麻酔:点滴などからの麻酔薬により無感覚&昏睡の状態をもたらす。
・ブロック麻酔:身体の一部を無感覚&筋弛緩の状態にする。
・全身麻酔:麻酔ガス吸入により無感覚&昏睡&筋弛緩の状態にする。

上記の4通りのうち、全身麻酔の際に麻酔器の機能がフル活用されることとなり、これにより長時間かつ広範囲にわたる手術が可能となります。また静脈麻酔においても人工呼吸機能が利用されます。

麻酔器の役割と構造

麻酔器は、麻酔をかける機能と人工呼吸機能を兼ね備えた医療機器です。
前者としては、酸素、空気、亜酸化窒素もしくは揮発性吸入麻酔薬の混合物からなる麻酔ガスを患者に吸入させて全身麻酔の状態に置く役割を行い、後者としては、麻酔にかかっている患者の呼吸を維持する人工呼吸器として働きます。

麻酔器は構造的に、ガス供給部と呼吸回路部からなります。
ガス供給部で、麻酔薬の気化や成分の混合を行うと共にガス圧などの調整が行われ、麻酔ガスが作られます。

呼吸回路部は、吸気弁→患者が装着するマスク→呼気弁→呼吸バック→APLバルブ(余剰ガス排出用)→カニスタ(二酸化炭素吸着用)→吸気弁、というような循環する回路的な構造となっています。この回路内にガス供給部から麻酔ガスを送り患者に吸入させて全身麻酔状態とするわけです。また、患者の呼気を循環させながら余剰な麻酔ガスや二酸化炭素の除去を行いつつ再び患者の呼吸器系へと送り込むという人工呼吸としての役割も果たしています。

手術における麻酔器の必要性

手術では、時間の長さや範囲の広さによって患者の筋肉を弛緩させる必要があります。通常の筋肉では緊張状態も生ずるため、切断部が硬くなり手術が困難となってしまいます。それを防ぐため筋弛緩効果を伴う全身麻酔が用いられるわけです。
しかしながら、全身麻酔下では呼吸など通常の身体機能が低下してしまいます。そのため人工呼吸も併せて行われなければなりません。
これら条件を満たす全身麻酔機能と人工呼吸機能を併せ持つ麻酔器を用いることで、長時間かつ広範囲な手術が可能となるわけです。

まとめ

以上の内容について要点をまとめると以下の通りとなります。
・麻酔には、局所麻酔、静脈麻酔、ブロック麻酔、全身麻酔の4つに大別できる。
・麻酔器は全身麻酔および麻酔時に人工呼吸を要する際に使用される。
・麻酔器は全身麻酔機能と人工呼吸機能を兼備し、これにより長時間かつ広範囲の手術が可能となる。

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