心電図が表す心拍数と呼吸数の関係

生体現象測定記録・監視用機器

心臓の鼓動が早まればそれにつれて呼吸も早くなり、逆に呼吸が穏やかになれば心臓の鼓動も穏やかになることを、私たちは経験的に知っています。では、心拍の状態を表す心電図から、その時の呼吸数を測定することは可能なのでしょうか。心拍と呼吸それぞれの仕組みを踏まえながら考えていきたいと思います。

心拍の状態を示す心電図とは

心臓は体内に血液を送り出すポンプのような役割を果たす臓器です。その働きを示す際、心臓を構成する心筋は緊張と弛緩をなし、それに伴い心臓の一部分に当たる左右心房および心室では収縮と拡張をなします。心筋の緊張と弛緩は洞結節から生じる電気的興奮に連動して生じ、これを電位差として検知し時間経過と併せて記録したものが心電図です。

心臓に電気的反応が特に生じていない時は、心電図上では特に波形が現れていない基線の状態にあるのですが、心臓の動き即ち心拍が起こると、左右の心房および心室の状態を示す波形が連なって現れます。それぞれの波形について、P波は左右心房の緊張、QRS波は心室部に緊張が伝わる状態、T波は心室部が弛緩していく経過、U波は1つの心拍の終了を意味します。

また、心電図検査は両手足4箇所および胸部6箇所に取り付けた電極から、12通りの電位差変化を測定する12誘導という方法によって行われます。

呼吸の仕組み

息を吸うことで空気中の酸素を体内に取り込み、息を吐くことで二酸化炭素を体外へ排出する。それが呼吸の働きです。呼吸により鼻や口を通して肺に空気が出入りしますが、それは肺の下部に位置する横隔膜や肺を取り囲む肋骨間の筋肉即ち外肋間筋の働きによってなされます。

吸気時には、横隔膜と外肋間筋が収縮し、横隔膜が下に押し下げられると共に胸郭が前後に膨らみ、その結果肺は拡張され空気が入ります。逆に呼気時には、横隔膜と外肋間筋が弛緩し、横隔膜が元の位置に戻ると共に胸郭が狭まり、これにより肺が縮まり空気が排出されます。

つまり、呼吸は肺の周囲の筋肉の働きによってなされるというわけです。

心拍と呼吸の関連性

上記の内容から、心拍と呼吸はそれぞれ別の筋肉の働きによってなされることが言えます。
通常の心拍は洞結節由来の電気的興奮即ち洞調律によって生じ、呼吸は横隔膜および外肋間筋の自律的運動によるものというわけです。

しかし、心理的な緊張などストレスを感じた時には、心拍と呼吸に共通してイレギュラーな反応が現れます。心拍においては洞調律以外の電気的反応である心室期外収縮が生じ、呼吸に関連する各筋肉はストレスの影響で通常より運動が早まるわけです。

このようなイレギュラー時の反応の共通性から、私たちは心拍と呼吸数に関連性を感じるのかも知れません。ですが、心拍と呼吸は異なる部分の筋肉の働きによるものであるため、心電図波形そのものから呼吸数など、呼吸関連の働きを解析するのは効率性のある方法とは言えないでしょう。

一方、ベッドサイドモニタ等、心電図や呼吸数およびその他のバイタルチェックを継続的に行う機器においては、心電図に用いる電極を利用して呼吸の状態を測定する方法が用いられます。つまり、心電図用の電極から呼吸に関連する筋肉の電気的反応を検知し、呼吸波形として表すことが可能というわけです。呼吸数の測定については、そちらのデータを利用することとなります。

まとめ

以上のように、
心電図は心拍即ち心筋の動きに伴う電気的反応の時間変化を波形で表したものであり、呼吸に関連する横隔膜や外肋間筋の動きとは直接的な関連性はないこと、バイタルチェックを継続的に行う医療機器使用の際には、心電図用の電極を利用し呼吸に関連する筋肉の電気的反応も併せて検知する方法が取られ、これにより呼吸波形が得られること、について確認してまいりました。

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