心電図上での早期再分極と突然死のリスクについて

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心電図の用語で「早期再分極」という所見があります。
以前までは無症候性で問題はないと言われていましたが、最近では突然死との関連がある所見として注目が集まっています。

○早期再分極とは?
早期再分極は心電図のQRS波の終わりとT波開始の間であるJ点の上昇(ST上昇)として所見に現れます。
心電図の波形は心筋の分極・脱分極・再分極という3つの活動を表しますが、これらは心筋の安静時・心筋の興奮・興奮から醒めるという活動に該当し、早期再分極(ST上昇)は興奮から醒めるタイミングが通常よりも早いことになります。
早期再分極は若年男性に多いとされ、健常人の1〜13%にみられます。また、アスリートにおいて頻度が高く、脈拍と血圧の減少と心電図上の左室高電位を伴うことが多いとされています。
参考:突然死としての早期再分極(渡部裕)

○早期再分極の突然死リスクとは?
欧米の報告では早期再分極が心臓死や不整脈死に関連するとされており、J波>2mmの症例の年間心臓死率は1.5〜2%、不整脈死率は0.8%前後であるとされています。
また、心室細動の既往がある患者の約30%に早期再分極を認め、早期再分極が認められる場合には心室細動の再発率が高いという報告もあります。
現時点では早期再分極と突然死との関係性は解明されていないことが多く、原因遺伝子も特定されていません。ブルガダ症候群(心電図上の特徴的なST上昇と心室細動による突然死を引き起こす疾患群)の病態と似ている症例もあり、心室の再分極異常が原因という説もあります。
早期脱分極の他に心電図上でST上昇を伴う疾患としては心膜炎という病気があります。心膜炎は炎症所見や胸痛といった症状があり、早期脱分極との鑑別が必要となります。
急性心筋梗塞もST上昇が特徴的であるため、胸部症状を伴うかが鑑別のポイントとなります。

○早期再分極の治療法は?
心室細動を繰り返す症例においては植込み型除細動器(ICD)植え込みが必要となります。
ICDとは致死性の不整脈を抑制する医療機器で、電気刺激を心臓に伝えるためのリードと機器本体から構成されペースメーカーと同様に体内に植え込んで電気刺激を与える装置です。
薬物療法としてはイソプロテレノールが心室細動の頻拍を抑制し、キニジンが予防に有効であったという報告があります。
早期再分極についてはまだ研究段階であり、今後原因が明らかになれば有効な治療法が確立されてくるでしょう。

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