心電図で心臓電気軸の平均値を見る理由

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心臓は、主に筋肉によって構成され、全身に血液を循環させる臓器です。心臓の筋肉は、その活動に伴って電気的反応が生じます。これを観測することにより心臓の状態を把握する方法が心電図検査になります。ここでは心電図においてQRS平均軸を観る理由について語っていきたいと思います。

心臓電気軸とは

心筋の興奮によって電気変化が生じます。この電気変化を記録したものを心電図といいます。心臓は立体的な構造をしていますから、その興奮によって生じる心臓から発せられる電力は大きさと方向を持っています。

これを数値化し、ベクトルとして表現したものを心臓電気軸といいます。この方向を立体的に表現する際に、前後、左右、上下の3つの軸が考えられ、どの角度になるかによって空間的方向が定められます。

心起電力ベクトルの方向を捉える場合は、心臓電気軸を立体的に把握し、前後、左右、および心臓長軸周辺の回転をもって行っていきます。心臓から発せられる電力のベクトルにはP軸、T軸、QRS軸など、さまざまな要素がありますが、通常、「心臓電気軸」とはQRS軸のことを指します。

これは、心室の興奮が心起電力の中で最も大きく、臨床的な意義からも重要であるためです。そして、QRSベクトルにおいても、平均ベクトル、初期ベクトル、最大ベクトル、瞬時ベクトルなどさまざまありますが、通常、QRS平均ベクトルを「QRS電気軸」と呼んでいます。

QRS電気軸を観る理由

前述したようにQRS軸は、心臓から発せられる電気の中で最も大きく重要です。ではなぜ、QRS軸の平均値である「QRS平均軸」を観るのでしょうか。

まず、心電図異常の一つに挙げられるのが電気軸異常です。これは、正常値であるQRS平均軸の0°〜90°の範囲を超えた数値の場合に当てはまります。0°を下回る場合を左軸偏位、90°を上回る場合を右軸偏位と呼びます。

左軸偏位では左室肥大・左脚ブロック・左脚前枝ブロックなどの病変が考えられます。
右軸偏位では滴状心・右胸心・右室肥大・肺性心・右脚ブロック・左脚後枝ブロックなどの病変がみられます。

つまり、QRS電気軸を観る理由として、心臓の電気軸異常に関して左軸・右軸偏位があるかどうかのチェックや、あるいは正常値を超える場合、大きく超えるか小さく超えるかでも所見が変わってくるので、そのチェックなどが挙げられることでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。心電図を観る際、臨床的に必要な情報はQRS平均ベクトルを確認し、正常値から外れていないかのチェックや、外れ方の度合いを見ることの重要性がご理解いただけたかと思います。左軸偏位や右軸偏位の発見には特に重要な項目になりますので、心電図を正しく理解し、活用していける一助になれば幸いです。

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