重要!人工呼吸器とその消毒

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大のニュースの中で、人工呼吸器の不足が世間を騒がせました。コロナウイルス感染者に限らず、医療の現場に人工呼吸器は欠かせない存在です。今回は、患者の命を支える大切な医療器具である人工呼吸器とはどういう装置か、そしてその消毒の重要性について解説します。

人工呼吸器とはどういう装置?

人工呼吸器の消毒について語る前に、人工呼吸器とはどういう装置なのかについておさらいしましょう。人工呼吸器とは、患者が自力で呼吸する事が困難な場合に使用する、肺に酸素を送る医療機器です。よく似たものに酸素マスクがありますが、酸素マスクとは異なり、鼻または口からチューブを挿入する場合と、喉を切開してチューブを挿入する場合があります。

人工呼吸器を使用するのは次のような場合です。
・自力で呼吸が出来ず、十分な酸素を取り込む事が出来ない場合。
・自力で呼吸が出来ず、二酸化炭素を排出する事が困難な場合。
・自力で呼吸するのに必要な筋力が弱っている場合。

人工呼吸器の消毒の仕方

人工呼吸器は、粘膜に直接接触するセミクリティカル器具に分類されています。
セミクリティカル器具に分類される医療機器の中で、呼吸器系装置は種類によっては構造が複雑な為、高水準消毒が困難な場合が多くあります。

その為、熱水処理(70℃を超える熱水を用いての30分間処理や、80℃を超える熱水を用いての10分間処理)を行う事で、高水準消毒の代わりとする事が認められています。熱水や消毒薬を循環させる事が出来ない箇所は、装置を分解して蛇管ホースや加湿水タンクなどの消毒を行います。

グルタラールを用いた高水準消毒は、残留薬で危険を生じる可能性がある為、揮発性があり残留の心配の少ない低濃度の次亜塩素酸ナトリウム(100ppm、1時間)を用いて中水準消毒を行います。また、結核菌などの抗酸菌に対しては、次亜塩素酸ナトリウムは高濃度でなければ効果がありません。
代表的な呼吸器系装置の消毒に使用する薬品:100ppm(0.01%)次亜塩素酸ナトリウム液

人工呼吸器の消毒の重要性

人工呼吸器を始めとする呼吸器系装置は、水分で湿った状態になっている事が多い為、グラム陰性菌が繁殖し易く、適切な消毒を怠ると肺炎の原因となり得ます。

これまでに、緑膿菌、セラチアなどによる汚染を受けた呼吸器系装置を使用した事が原因と考えられる集団感染の事例が数多くあります。呼吸器系装置は十分に消毒し、衛生管理を徹底する必要があります。

まとめ

今回は、人工呼吸器とはどの様な装置かというおさらいとその消毒の重要性についてご紹介しました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大による人工呼吸器の不足という事態は一応の落ち着きを見せていますが、まだ予断は出来ません。人工呼吸器を適切に利用する事をこれからも心掛けて行きましょう。

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