人工呼吸器の感染対策について

生体現象測定記録・監視用機器

自力での呼吸が困難な状態となった患者さんに用いられる人工呼吸器。この医療機器は感染リスクの高い疾病に侵された患者さんに利用されるケースも珍しくありません。そのため、適切な感染対策が不可欠です。それはどのようになされるものなのか、見ていきたいと思います。

人工呼吸器の役割

人間の呼吸は、肺の下部にある横隔膜の上下に伴い、肺の体積が増減することによりなされます。横隔膜が下がれば肺が広がって外気を取り込み、横隔膜が上がれば肺が収縮し肺の中の空気を外に出します。このような仕組みで、酸素を体内に吸収し、二酸化炭素を体外に排出します。

その呼吸の仕組みが自力で行えない状態になった時に人工呼吸器が用いられます。患者さんの呼吸器官への空気供給によって吸気と呼気を機械的に行い、呼吸を持続させる医療機器が人工呼吸器というわけです。

人工呼吸器の構造

人工呼吸器は構造的に、本体と呼吸回路に分けられます。本体は空気を送り込むための動力部分に相当します。そして呼吸回路は、本体から送られてくる空気を患者さんに吸入させる吸気と、肺内の空気排出を促す呼気を交互に行うための部分となっています。

呼吸回路は構造的に、患者さんに供給する吸気あるいは患者さんから排出された呼気が通過する配管が主体となっています。そこに、吸気フィルター、加湿加温気あるいは人工鼻、気管チューブ、ウォータートラップ、呼気フィルター、呼気弁などの部品が配置され、呼吸回路を構成しているわけです。

人工呼吸器の感染対策

感染症リスクの面から鑑みれば、人工呼吸器の使用は大量のエアロゾルが発生しやすい状況となります。その点に充分注意することが必要です。

構造的な観点から、人工呼吸器の感染症予防対策について確認していきましょう。

まず原則として呼吸回路や付属品などにはディスポーザブル製品を使用することが挙げられます。使い捨てすなわちディスポーザブルとし、一回のみの使用に限定することで、呼吸回路に残留する感染源の危険を排除できるわけです。

呼吸回路には、空気の供給量を調節するためのフローセンサ用チューブや圧力センサ用チューブを有するタイプも存在します。そのような場合、該当するチューブから内部へウイルス等が侵入しない構造となっていることが求められます。

また、吸気フィルターと呼気フィルターには共にウイルス除去の能力を持つタイプを使用することが適切であると言えます。

人工鼻使用については、バクテリアフィルター付の使用が推奨されます。これにより医療従事者への感染リスクを低減させることが可能です。加えて人工鼻は、メーカーが推奨する使用時間に併せて新品に交換することが必要となります。

なお、加温加湿器と人工鼻の併用は、人工鼻が閉塞してしまう恐れがあるため避けるべきです。

呼吸回路の交換においては飛沫や残留物による曝露リスクが高くなり、特に注意が必要です。防護服の装着は勿論のこと、エアロゾルの発生を抑えるための適切な手順が欠かせません。

具体的手順は製品の違いなどにより異なります。しかし基本的には、取外し取付け共に、供給空気の流れに沿って上流側すなわち本体に接続される吸気側から行うこととなるでしょう。

まとめ

以上のように、患者さんの呼吸器官に空気を供給することで呼吸を維持させる人工呼吸器は構造的に本体と呼吸回路に大別できるという基本を踏まえながら、その感染対策について確認してまいりました。
要点にまとめると、以下の通りとなります。
◆呼吸回路は原則単回使用のディスポーザブル仕様とすること。
◆各部品は感染防止策に沿って適切に使用すること。
◆呼吸回路およびその部品の交換に関しては、定められた手順に沿って行うこと。

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