脳波計の周波数フィルターに用いられている回路

生体現象測定記録・監視用機器

脳波計を用いる際には、脳以外の電気的反応であるノイズを除去する必要があります。ノイズ除去の仕組みの1つには周波数フィルターが用いられており、それは主にCR回路およびRC回路で構成されています。それぞれどういったものなのか、見ていきたいと思います。

脳波について

生体反応の1つとして、生命体を構成する細胞は電気的反応を生じさせています。それに準じて、脳細胞も僅かながら電気を発しています。脳から生じる電気的反応を電位差として捉え、それを判別することによって脳の状態を把握する検査が脳波検査です。

脳に生じる電気は、その向きや大きさが一定ではありません。それらは時間によって変化します。つまり交流の電気に相当し、検出される電位差は時間に伴い振幅する波として測定
されます。それが脳波です。

波形をデータとして扱う際には、波の振幅1組が1秒間で何回生じているかを意味する周波数(単位:Hz)という物理量を用います。それは脳波においても同様です。周波数の違いにより脳波は、δ波・Θ波・α波・β波などに分類されることとなります。

それらの波形が検査データの中にどのように現れているかを調べることにより、脳の状態について検査されるわけです。

脳波計の周波数フィルター

脳の電気反応は極めて微細であるため、脳以外の生体電気や環境中の電磁波など、いわゆるノイズの影響を強く受けることになります。正確な検査を行うには、それらノイズ成分を除去することが不可欠です。そのための仕組みとして脳波計には差動増幅器と周波数フィルターという機能が備わっています。

ノイズと脳波がないまぜの状態になっている入力信号から、差動増幅器は電位差の大きさの部分、周波数フィルターは周波数領域の部分に関し、ノイズに該当する要素を除き、脳波に相当する成分を残すわけです。

脳波計に用いられる周波数フィルターには幾つかの種類があります。その中で基本として全ての脳波計に共通して用いられているのは、ハイパスフィルターとローパスフィルターです。

ハイパスフィルターは、設定された周波数より低いものを遮断し、高いものを透過させる機能を持ちます。ロー(低)を除きハイ(高)をパス(通過)させることから、この名称が付いています。それとは逆にローパスフィルターは、設定された周波数より高いものを遮断し、低いものを透過させます。ハイ(高)を除きロー(低)をパス(通過)させるわけです。

その2つによって、脳波に該当するδ波・Θ波・α波・β波の範囲の周波数を透過し、それ以外を除去するよう設定されることとなります。それによって検査時に適正なデータが扱えるようになるわけです。

CR回路およびRC回路とは

ハイパスフィルターとローパスフィルターを電子回路で表すと、共通して抵抗(記号:R、単位:Ω)とコンデンサ(記号:C、単位:F)によって構成されていることがわかります。
抵抗とは電気の流れにくさを表す指標と捉えて良いでしょう。

コンデンサは蓄電を意味し静電容量すなわち電気を溜められる量で表されます。またコンデンサには、直流の電気を通さず交流を通し、周波数が高い交流ほど通しやすいという性質があります。

ハイパスフィルターの回路では、入力から出力に至る区間で、コンデンサ(C)→抵抗(R)で配置され、これをCR回路と呼びます。ローパスフィルターの回路ではハイパスフィルターと順序が逆の、抵抗(R)→コンデンサ(C)の順で配置され、これをRC回路と呼びます。

ハイパスフィルターおよびローパスフィルターについて、遮断および透過の境界となる周波数とfとすると、以下の公式が成り立ちます。
 f=1/(2πCR)   ※π:円周率(約3.14)
CR回路では、公式から導き出される値より低い周波数が遮断、高い周波数が通過します。
RC回路では逆に、公式から求められる値より低ければ通過、高ければ遮断となるわけです。

まとめ

以上のように、脳波検査の基礎およびノイズ除去の重要性を再確認しながら、主な周波数フィルターの回路について見てまいりました。ハイパスフィルターはCR回路、ローパスフィルターはRC回路であり、相違点は抵抗とコンデンサの順序であるところが要点と言えます。脳波計の仕組みについて把握しておくことで、より良い検査の実施に役立つものと思われます。

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