心電図における低電位差・高電位差について解説

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心電図における「電位差」をご存知でしょうか?
心電図のグラフとは、心臓の電気的な変化をグラフ化して表示したものです。
このグラフは横に時間軸、縦に電位差を表しています。


時間軸は1マス0.04秒(1秒は25マス)が一般的で、5マス毎に太線となっています。
電位差は1マス0.1mV【ミリボルト】、こちらも5マス毎に太線となっています。
心電図検査の所見にてよく聞かれる「低電位(差)」や「高電位(差)」とは一般的にQRS波の振幅(縦軸)を意味します。低電位とは、QRS波の振幅が小さいこと、一方で高電位とはQRS波の振幅が大きいことをさします。(文献や研究資料によってはQRS波に限定せず、波形が小さいことを低電位(差)、波形が大きいことを高電位(差)と表現することもあるようです。)
この低電位・高電位といった所見は心臓の電気的興奮、皮膚の状態、体型、皮下脂肪の状態、体内の水分貯留や肺に含まれる空気によって波形に現れることが多く、臨床では病的な所見であると判断されることは少ないようです。
ただし、その他の検査所見によっては低電位・高電位と疾患の関連性が疑われる場合もあります。

○低電位・高電位で疑われる疾患
低電位・高電位という所見ではどのような疾患との関連性が疑われるのでしょうか?
まず、低電位では胸水や肺気腫、心嚢水貯留、アミロイドーシスが疑われることがあります。
レントゲン、CT、MRI等の所見を併せて総合的に判断されます。
高電位では、心筋症(心筋の収縮が円滑に行われない病態)、ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群(MELAS)が疑われることがあります。
また、高血圧や肥満でも高電位を表すことがあります。

○低電位における研究を紹介
低電位・高電位については臨床的な研究が進んでおらず、疾病の確定診断としての有効性はまだ確立されていないのが現状です。
低電位においては、【日本人における低電位の基準とその臨床的意義について、心臓 Vol24 No1(1992):津谷恒夫 石川恭三】で健常者におけるQRS振幅の基準や有病率との関連性について研究をされています。
少し古い研究ですが、低電位についての数少ない研究となっています。
→こちらから確認できます。(pdfファイル
参考:・ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群成人例における心エコー図所見の特徴:椎名 亮揮ら
・5年の経過を追えた野生型ATTRアミロイドーシスの1剖検例:川人 充知ら

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