ファイバースコープの感染事故や消毒に関すること

生体現象測定記録・監視用機器

医療の現場でファイバースコープといえば内視鏡の事を指しますが、用途は多岐にわたり「気管支ファイバー」「喉頭ファイバー」「胃ファイバースコープ」として用いられています。今回は、多くの現場で使用するファイバースコープの消毒方法について見ていきましょう。

ファイバースコープの世界共通のガイドライン

1990年代、内視鏡学会で発表された「胃カメラ後急性胃炎」をご存じでしょうか。これは胃カメラを通じて、患者から別の患者へピロリ菌が移った事が原因により発症するものです。ファイバースコープは精密機械である為、高温高圧減菌する事が出来ない為に起こった事案でした。

ファイバースコープは、「喉頭ファイバー」「胃ファイバースコープ」として用いられるように、腸内や口腔内には恒常的に多数の雑菌が潜んでいます。その為、感染防御力を持つ消化管に挿入するファイバースコープは、完全無菌にする意味は無いのですが、世界共通のガイドラインでも、内視鏡機器に使える最も強い高レベル消毒でファイバースコープを消毒する事を定めています。

高レベル消毒とは、感染症を生み出す病原体を全て死滅させるレベルの消毒を指します。

グルタラール製剤の特徴と留意点

消毒液のグルタラールは医療現場で使われてきた歴史が長く、その分データが豊富で、学会で正式承認されています。グルタラールは、消毒する医療機器の材質を傷めにくいというメリットがあります。そのため、ファイバースコープの消毒に適した消毒薬なのです。デメリットとしては、消毒に時間がかかる事です。そしてグルタラールの蒸気は、目の粘膜や呼吸器に刺激し、液が表面にくっつくと損傷(化学熱傷)します。そのため、取り扱いには細心の注意が必要です。

ファイバースコープの感染事故

これまでに肝炎ウイルス、サルモネラ菌、緑膿菌、ピロリ菌、AIDS、結核、梅毒、など多くの伝染病の感染の事例があります。事故の原因は大きく分けて2つ挙げられます。1つは、劣化した消毒液の再使用です。

2つ目は、処置具になります。ポリープ切除や細胞検査を行う器具の事を処置具といいますが、これらは粘膜を傷つけるため注射針やメスと同じものです。ファイバースコープ本体よりも高度な消毒、滅菌が必要になります。

ファイバースコープ消毒の未来

ファイバースコープ消毒には、今後AI技術の活用が期待されています。ファイバースコープの消毒・洗浄は自動洗浄機に入れて行えるような単純、簡単なものではありません。その一連の作業は「使用直後の前洗浄」「ブラッシング」「検査」「洗浄消毒機への正しいセッティング」「乾燥」「保管」と進み、多くの手作業を含み、スタッフの技能に依存しています。

確実な消毒・洗浄を行うために、機器をネットワーク接続して工程管理が出来るソフトウェアが開発されています。この方向性を更に進めて、チェックの強化、ICTによるデータ取得、センサーの配置などAIによる補助を行う事により、消毒・洗浄の過程をさらに安全性の高い物にしたいと考えられています。

まとめ

ファイバースコープの消毒記録は、スタッフが口頭や紙で確認すると人為的なミスが起こりがちです。現在はこの洗浄状況を、電子上で管理する事も可能になりました。人為的なミスをゼロに近づける為の技術開発は日夜続いています。

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