脳波計の差動振幅器や弁別比について解説

生体現象測定記録・監視用機器

○脳波計と脳波の種類
脳波計は頭皮に装着した電極によって脳の電気活動を導出し、わかりやすいように増幅させ、脳波を記録する検査機器です。
脳波は周波数帯によって以下の5種類に分類されます。


・γ波(ガンマ波)【30Hz以上】
興奮、強いストレス、過度の緊張を感じている状態のときに現れます。

・β波(ベータ波)【14~30Hz】
集中や軽度の緊張やストレスを感じている状態のときに現れます。

・α波(アルファ波)【8~13Hz】
左右対称の規則的な波形です。閉眼してリラックスしている状態のときに現れます。

・θ波(シータ波)【4~7Hz】
浅い睡眠や、睡眠に近いリラックス状態のときに現れます。

・δ波(デルタ波)【3.5Hz以下】
熟睡している状態や昏睡などの意識レベルが低下している状態のときに現れます。

○脳波計の性能を決める差動増幅器の役割
これらの脳波(電気信号)は心電図や筋電図などに比べて非常に弱いため、脳波を導出・記録するためには差動増幅器を用いて電気信号を増幅(大きな電圧・電流の信号に換える)させる必要があります。
この差動増幅器は一般的に脳波を100万倍以上(120dB)に増幅され、入力換算雑音に1回以下、3μV以下に抑える性能が必要になります。
※入力換算雑音…脳波計の入力端子間に抵抗器でつないだ状態で入力信号がないときに導出される雑音信号の大きさのこと。
または脳波計自体から発生するノイズ(内部雑音)の大きさのこと。
数値が低い方が良いとされる。
高い振幅が必要となるため、電源や他の機器から電磁ノイズや静電気からの干渉を受けやすく、波形に雑音が入ってしまいます。
そのため、同相弁別比(CMRR)の高い差動増幅器が用いられます。

○同相弁別比とは?
差動増幅器を用いる場合、雑音(同相信号)が出力されてしまいます。
そしてその差は差動増幅器によって異なります。
同相弁別比(CMRR:Common Mode Rejection Ratio)とは、逆相信号に比較して同相信号がどの程度抑えられるかを表す指標です。
同相弁別比は、逆相信号の増幅度(差動利得:Ad)と同相信号の増幅度(同相利得:Ac)の比で求めることができ、以下の計算式が成り立ちます。
同相弁別比(CMRR)=差動利得÷同相利得
一般的にこの値が高いほど性能がよい差動振幅器であると言えます。
最近では優れた差動増幅器により微弱な電気信号でもシールズルームなしで検査ができる様になりました。

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