基礎から把握、正常な心電図の数値的範囲について

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血管を通して全身に血液を行き渡らせるために欠かせない、原動力として働いている心臓。その状態を電気的に観測する手段が心電図検査です。その検査でメインに扱われる心電波形について、その基本を踏まえながら、正常値の範囲について見ていきたいと思います。

心臓の役割と心電図検査

人間は体内に血液を循環させることによって、酸素やその他栄養素が全身の細胞に供給し生命を保っています。その血流を生じさせるための役割を果たしている臓器が心臓です。

心臓の大部分を占める器官は、左右の心房・心室の4つです。血液は心臓において、以下のルートを通過します。

呼吸器官である肺から、酸素を取り込んだ血液は左心房に流入します。そして左心室に入り、そこから動脈を通って全身に送り出されるわけです。身体中の細胞に酸素を供給した血液は静脈を通って心臓に戻り、その際には右心房から流入してきます。その後右心室に入って再び肺に送られ、その後肺から酸素を含んだ血液が再度左心房に流れてきます。

このような順序で、血液は心臓と肺を介しながら身体中を循環しているわけです。その循環を促す力を発生させているのは、心臓を構成している心筋です。

心房部の心筋は血液を吸入し、心室部の心筋は血液を排出する形で運動します。これによって、心臓が流れを生み出すポンプのような機能を示すことになるわけです。

筋肉の1種である心筋は、緊張と弛緩によって働きをなします。それは心臓内を流れる電気信号に伴って作用するものです。その心筋の動作に連動する電気信号を検知することによって、心臓の働きや状態を知る方法が心電図検査です。

心電図波形

一般的に行われる12誘導心電図を用いた検査では、被験者の両手両脚および胸部左側6箇所に電極を取り付けて実施されます。それら電極によって誘導という、いわば電気信号を観測する視点が12通り見出され、それらを使って観測が実施されるわけです。その際の観測方法が心電図となります。

心電図は、縦方向に電位差・横方向に時間を取るグラフを意味します。心臓に生じる電気刺激を電位差として捉え、その時間的変化を観測していくわけです。

その方法で心臓の電気的変化を見ていくと、心臓の鼓動すなわち心拍が生じるごとに、複数の波形の集合体が現れます。これが心電図波形です。これを構成している各波形は、心拍に伴って心臓のどの部分がどのように働いているかを示しています。

波形の種類は以下の通りです。

▽P波:心電図波形の最初に現れる波です。心房部の興奮、すなわち心房を構成している心筋の緊張を表します。波の起点は右心房の電気反応開始を意味し、波の前半2/3は右心房の、後半2/3は左心房の興奮状態を示すものです。

▽QRS波:P波が収まった後に現れ、左右心室部における興奮の伝わり方を表します。Q波・R波・S波の3つからなり、R波では電位差の反応がとくに大きく現れ、Q波とS波はR波とは逆向きに振れる波となります。

▽T波:S波の次に生じ、心室部の興奮状態が消退していく状態を反映しています。

▽U波:T波の後に見られることがある小さな波です。

検査においては波形そのものだけではなく、波の間隔についても診断における判別材料となります。主に用いられる種類は以下の通りです。

▽PQ間隔:心電図において、P波発生からQ波が始まるまでの時間軸方向の長さを指します。心房に電気的興奮が生じ、それが房室結合部を通って心室心筋に緊張状態が生じるまでの時間を意味しています。

▽QT間隔:Q波の発生からT波収束に至るまで、すなわち心房部における電気的興奮の発生と収束までの時間を意味します。

波形や範囲における正常値

検査結果は、各波形および間隔の形状や心拍ごとの波形の比較など、心電図の判別に基づいて診断が出されます。その中で範囲的に表される類に関しては、波形や間隔が示す数値によって判断され、主な基本的部類としては以下に挙げられる範囲が正常値とされています。

▽P波の幅が0.1秒以下
▽PQ間隔が0.2秒未満
▽QRS波の幅が0.1秒未満
▽P波の高さが0.25mV未満

まとめ

以上のように、心電図検査について心臓の働きなど基本的部分から抑えつつ、波形や間隔など基礎的要素から判別できる正常値の範囲について見てまいりました。これら以外にも様々な視点から判別・診断が行われ、総合的な形で検査結果が示されることとなります。

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