人工呼吸器による陽圧換気とその合併症とは?

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人工呼吸器による呼吸管理には気管挿管・気管切開にて気道から換気を確保する「侵襲的人工換気」とマスクを使用して気道内圧を陽圧に保ち換気を補助する非侵襲的陽圧換気法(NIPPV)があります。
いずれの方法も「陽圧換気」という呼吸管理を行いますが、陽圧換気とはどのような呼吸管理なのでしょうか?

○陽圧換気と陰圧換気
ガスの流れは圧力の低い箇所から圧力が高い箇所へ移動します。
自然呼吸では胸腔内の圧力を下げることで呼吸をする「陰圧呼吸」です。
一方で人工呼吸器による呼吸は機器から陽圧をかけて呼吸をする「陽圧呼吸」となります。

○自然呼吸とは?
陽圧換気を理解するために、ヒトが生理的に行なっている自然呼吸を理解する必要があります。
まず、自然呼吸における吸気では横隔膜と肋間筋などの吸気補助筋の収縮により胸郭が膨らみ、胸腔内は陰圧となります。
同時に肺が膨らみ、肺へガスが送り込み肺胞でガス交換を行います。
吸気では気道内も陰圧となります。
一方で呼気では、肺と胸郭の弾性によって行われます。
収縮した横隔膜と肋間筋などの呼吸補助筋が緩み横隔膜が元の状態に戻ります。
(上方へ戻る)これにより肺が縮むことでガスが気道を通り口や鼻から体外へ吐き出されます。
胸腔内は陰圧となっており、呼気時の気道のみ陽圧となります。

○人工呼吸とは?
人工呼吸器による呼吸(人工呼吸)による吸気では、人工呼吸器で設定した量または圧力の数値になるまでチューブを経由してガスを肺へ送気して肺を強制的に膨らませて肺胞でガス交換を行います。
肺が強制的に膨らむため、同時に胸郭も膨らみます。
チューブからガスが送気されるため、吸気では気道内圧・胸腔内圧ともに陽圧となります。
胸腔内が陽圧になることで静脈還流量が減少して身体へのさまざまな悪影響が現れます。
一方で呼気は自然呼吸と同様に肺と胸郭の弾性によってガスが気道を通り口や鼻から体外へ排出されます。
ただし、人工呼吸器の設定で呼吸数を設定している場合には定められた呼吸数となります。

○陽圧換気による合併症
人工呼吸器の使用による持続的な陽圧換気によって人工呼吸惹起性肺損傷(VALI)が引き起こされるリスクがあります。
VALIは肺胞が過伸展、または虚脱再開通により起こるとされています。
肺内に虚脱肺胞があることで肺胞が過伸展してしまうため、肺胞と虚脱肺胞とが擦れることが原因とされています。
このような肺障害を抑えるために、1回換気量は患者様の体重に合わせて適切に設定される必要があります。

 

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