人工呼吸器の目的と適応とは?

生体現象測定記録・監視用機器

人工呼吸器を使用する目的は主な目的は以下の4つが挙げられます。
①酸素化の改善
②換気の維持
③呼吸仕事量の軽減
④緊急時や手術時などの呼吸確保
人工呼吸器の適応は明確に定められた基準はありませんが、上記の目的が達成されない場合に人工呼吸器の適応となるといって良いでしょう。よって人工呼吸器の適応は以下の項目が考えられます。


①酸素化が不十分(酸素療法下でも動脈血酸素分圧が維持できない)
②換気量が低下している
③呼吸筋の麻痺などにより呼吸が困難
④意識レベルの低下や全身麻酔下での手術時、延命治療など

 

○呼吸不全とは?

人工呼吸器を開始する基準となるのは呼吸不全があるかどうかがポイントになります。
「厚生省特定疾患の呼吸不全(調査研究班昭和56年度報告書)」によると、「動脈血ガスが異常な値を示し、それがために生体が正常な機能を営みえない状態」と定義されており、室内気吸入時の動脈血酸素分圧(PaO2)が60Torr以下となる状態を呼吸不全という診断となります。
なお、呼吸不全において45mmHg以下で二酸化炭素分圧の増加を伴わない場合では「I型呼吸不全」、45mmHg以上では「II型呼吸不全」という診断となります。
呼吸不全が1カ月以上持続している状態を「慢性呼吸不全」と言います。(代表的なのは慢性閉塞性肺疾患【COPD】)一方で急性の経過で起こる呼吸不全を「急性呼吸不全」といいますが、明確な定義はありません。急性呼吸不全では病態が急速に変化するため、迅速に対応できる知識を得ておく必要があります。
呼吸不全の基準となる「PaO2が60Torr以下」という数値ですが、60Torr=(イコール)酸素飽和度(血液中にヘモグロビンと酸素が結合している比率:SaO2)では約90%に相当します。

 

○人工呼吸器の開始基準

妙中信之「血液ガスから人工呼吸治療へ―人工呼吸が必要になる病態」では人工呼吸器の開始基準を以下のように定めています。(一部改変)

●低換気 
・動脈血酸素分圧(PaO2)…60Torr以下(慢性呼吸不全においては20Torr以上の上昇)

●酸素化能の障害 
・動脈血酸素分圧(PaO2)…60Torr以上(酸素10L/分以上の酸素吸入下)
・動脈血酸素飽和度(SpO2)…90%以下(酸素10L/分以上の酸素吸入下)

●理学的所見などの異常
・呼吸回数…35回/分以下
・呼吸様式の異常がある場合(陥没呼吸、鼻翼呼吸、下顎呼吸、高度の呼吸困難状態、意識レベルの低下など)

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