人工呼吸器の目的と最近の動向

生体現象測定記録・監視用機器

人工呼吸器は呼吸の障害や不全に対して、呼吸の補助を行う機器です。自発的な呼吸ができなければ酸素を取り込むことができず、生命活動を維持することができません。人工呼吸器は命を繋ぐ大切な医療機器です。

○人工呼吸器の目的
人工呼吸器の目的は簡単にいえば「呼吸を補助する」ということなのですが、もう少し掘り下げて目的を知っておくことで人工呼吸器の重要性をさらに理解することができます。

①換気量の改善
換気量とは呼吸によって出入りするガスの量を差します。換気量の低下を改善させることで、肺で行われるガス交換の異常を是正します。
1回換気量(1回の呼吸)は体重あたり6~8mlで計算をします。1回換気量が多すぎると肺胞が膨張しすぎて損傷してしまうリスクがあり、逆に少ないとガス交換の異常を改善できません。
1回換気量の設定指示は医師が行いますが、患者様の状態や機器の不具合などにより換気が適切に行われないこともあるため、機器の定期的なモニタリングは必須です。

②肺容量の増加を図る
低酸素血症では動脈血酸素含有量の改善を目的に人工呼吸器を使用します。肺内シャント(肺胞内にあるガスと肺胞毛細血管を流れる静脈血が接触しないことでガス交換ができないまま心臓へ還流している状態のこと)では虚脱した肺胞を開放することで肺容量を増加させます。

③呼吸仕事量の軽減
呼吸をするには横隔膜と複数の呼吸補助筋が働くことが必要です。ALS(筋萎縮性側索硬化症)などの神経系障害よりこれらの呼吸筋がうまく機能しない場合においては人工呼吸器で代行することで、呼吸筋の疲労や酸素消費量の減少を防止できます。

④オペや緊急時への対応
オペ時に麻酔を使う際に使用されたり、緊急時(状態の悪化)や心肺蘇生後自発呼吸がない状態の患者に対して人工呼吸器が使われます。

○在宅人工呼吸療法の普及
医療から介護へ、病院から在宅へという流れから在宅人工呼吸療法(HMV)の普及が進んでいます。
在宅人工呼吸の方法はマスクによる非侵襲的方法(NPPV)と気管切開下に行う気管切開下陽圧人工呼吸(TPPV)にわかれます。自力で排痰ができ、誤嚥の危険がない場合にはNPPVが選択されます。
NPPVでは使用するマスクの選択も重要になります。鼻を覆うネーザルマスクと、鼻・口を覆うフルフェイスマスクの2種類があります。医師や看護師と相談してどちらにするのか決めていきますが、マスクやストラップが皮膚に触れて湿疹などのトラブルが起きることも少なくありません。同じマスクでもサイズや装着方法の指導も大切です。

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