MRI拡散強調画像とは 

診断用機器

はじめに

MRI画像技術の進歩はめざましく、これまでは画像を得ることが難しかった部位や病気の症状についても、最近では画像化ができるようになってきました。
今回はそのようなMRI画像の中でも、脳梗塞の早期発見やがんの診断に用いられている「拡散強調画像」について見ていくことにします。

MRI拡散強調画像とは

液体の中に存在する水分子は、絶えずランダムに運動をしています。
これにより分子は、液体の中に存在する他の分子や微粒子にぶつかります。
その結果、ぶつかられたほうの分子や微粒子もランダムに動き回り、液体中に拡散していくことになります。
このような水分子の運動の大きさや方向は、周囲の環境の条件によって大きく変わりますので、この運動(拡散)の様子をとらえることができれば、細胞の状態などのミクロな情報も得ることができるようになるのです。
これを実現するのがMRIの「拡散強調画像技術」です。
拡散強調画像では、水分子の運動(拡散)が大きい部分は低信号として、運動が低い部分は高信号としてあらわされます。

脳梗塞と拡散強調画像

脳梗塞が発生すると、血管がつまって栄養が神経細胞に届かなくなり、細胞の浮腫が起きます。
すると、細胞と細胞の間が狭くなり、細胞外液の動きが通常の状態よりも制限されることになります。
そうなると水分子の運動が低下するため、その部分がMRIの拡散強調画像で高信号として検出されるようになるのです。
従来の撮影法では脳梗塞が発生してからある程度の時間がたってからでないと検出することができませんでしたが、拡散強調画像では非常に早い段階から脳梗塞の発生を検出できるようになりました。
脳梗塞では「どれだけ早期に治療を行うことができるか」が機能の回復や後遺症の程度に大きく影響を与えますから、その点において拡散強調画像は非常に有用な手段といえるでしょう。

腫瘍と拡散強調画像

がんなどの腫瘍の場合でも、細胞密度が高くなるため、細胞間が通常よりも狭くなります。そうすると脳梗塞の場合と同様に、水分子の運動が低下するため拡散強調画像で高信号として検出されやすくなります。
このためMRI拡散強調画像は腫瘍の診断にも用いられており、特に前立線がんの診断ではほぼ必須となっている他、膀胱がん、腎盂尿管がんの診断でも役立っています。

最後に

最近では拡散強調画像技術の進歩により、身体の一部分だけではなく全身を対象とした画像も得ることができるようになってきました。
これにより全身のがんをチェックする手段として、がん検診でも拡散強調画像が用いられるようにもなっています。
従来、全身のがんをチェックするための方法としては、PET(陽電子放射断層撮像法)がよく知られていますが、PETでは微量ながら放射性物質を体内に注入しなければならなりません。
その点、MRIならば放射性物質を全く使用せずに画像を得ることができますので、被爆の心配がありません。
拡散強調画像をはじめとしたMRIの画像技術は、全身がん検診の手段としてなど、さらに広い領域で用いられるようになるかもしれませんね。

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