機能的MRI(fMRI)とは?~構造MRIと何が違う?~

診断用機器

はじめに

MRIは、日本語では磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Imaging)といい、身体内の疾患や損傷を調べるための機器として今日の医療現場には欠かせない存在となりました。
このMRIには、身体の内部構造を見るためのもの(構造MRI)だけではなく、身体内の、特定部位の働き具合を見るためのMRIもあり、後者は機能的MRIもしくはfMRI(磁気共鳴機能画像:functional Magnetic Resonance Imaging)と呼ばれています。
今回は、この機能的MRIについて紹介します。

MRIで画像を得る原理

機能的MRIの原理について理解するために、通常のMRI(構造MRI)で身体内部の画像を得るための原理を簡単に見ておくことにしましょう。
人体を構成する成分である水や脂肪には、水素原子が含まれていて、通常の状態ではこの水素原子はバラバラの方向を向いた状態で存在しています。
そして、MRI装置の中には強力な磁場が発生しており、装置の中に入った人の身体にある周波数の電波があてられます。
するとバラバラの方向を向いていた水素原子は、一斉に同じ方向を向くようになります。
この現象は「磁気共鳴」と呼ばれ、MRIという名称のもとにもなっています。
その後、電波を切ると水素原子は元の方向に向きを戻しますが、このときのスピードには水素原子が置かれた周囲の環境によって差があります。
MRIでは、このような水素原子の動きを信号として利用することで体内の構造を画像化しているのです。

機能的MRIの原理

血液中の赤血球にはヘモグロビンが多く含まれています。
ヘモグロビンの役割は、必要としている身体の組織に酸素を運ぶことです。
ところで、酸素を運んでいるとき(赤血球と酸素が結合しているとき)のヘモグロビンは、磁気的な性質が反磁性(磁石に反発する)になっており、酸素を運び終えた後(放出した後)には常磁性(磁石に弱く引き寄せられる)になることが知られています。
常磁性は磁場のわずかなゆがみをもたらし、この磁場のゆがみは水素原子に影響を与え、結果としてMRIが読み取る信号にも変化を及ぼすことになります。
ある活動を行っているとき、その活動に関与する部位はヘモグロビンによって運ばれる酸素をより多く必要としますので、このヘモグロビンの変化による信号を画像化すれば、その活動に関与している部位を特定するといったことが可能になるのです。
これが機能的MRIの原理です。

最後に

機能的MRIは、主に脳の研究で多く用いられています。
機能的MRIの開発によって、脳科学研究は大きく進歩し、研究の対象となる範囲も拡大していきました。
また最近では、脳の診断や治療のために機能的MRIが利用されたり、医療以外の領域である行動経済学の研究に用いられたりするようにもなっています。

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