脳波計で観測されるα波について~自発的活動説・反響回路説・ペースメーカー説~

診断用機器

はじめに

α波は、目を閉じてリラックスしているときに脳波計で観測される脳波であり、5種類ある脳波の中でも最も一般的に知られているものと言えるかもしれません。
脳波には周波数と呼ばれる指標があります。
これは1秒の間に何回その波(脳波)が繰り返されるかを表しています。
この周波数が8Hz以上、13Hz未満の脳波をα波と呼びます。
といっても、実際にほとんどの人のα波は、9Hzから11Hzという比較的狭い範囲に含まれています。
そして、脳波を理解するには、まずこのα波を理解することが大切です。
今回は、このα波について見ていくことにしましょう。

α波はどのようにして生まれるのか?

α波をはじめとする脳波は、脳の比較的表面(頭皮)に近い部分に位置する大脳皮質の神経細胞(ニューロン)の中でも、錐体細胞と呼ばれるニューロンの電気的活動が脳波計によって記録されたものです。
ただし、ニューロンの電気的活動といっても、ひとつひとつのニューロンにおける電気的活動は非常に小さなものです。しかも、その活動が読み取られるためには髄膜や頭蓋骨、皮膚といった何層もの「障害物」を通過して脳波計の電極にまで達しなければなりません。
したがって、脳波計に見られる脳波は、電極があてられた部位の下に位置する多数のニューロンが同期的に活動した結果と考えられています。

そのような脳波の特徴は、そのリズミカルさ(律動性)にあります。
α波の律動性がどのように生まれるのかに関しては、以下のような仮説が考えられています。

ニューロンの自発的活動説

大脳皮質のニューロンの電気的活動そのものに律動性が備わっており、目を閉じてリラックスしているときのように大脳皮質があまり活動的でないときには、多数のニューロンが同期して電気的活動を行っているのでリズムが生まれる、とする説です。

反響回路説

大脳皮質と脳幹にある視床の間を結ぶ反響(フィードバック)回路を活動電位(ニューロンの発火、スパイク)が巡回するのに約100mm/秒かかるので、1秒に約10回(つまり約10Hz)というリズムが生まれるとする説です。
ただし、この説では麻酔使用時などに大脳皮質の活動電位が消えても脳波が観測されることや、大脳皮質を取り除いても、その下の部分から律動性が記録されることを説明することができません。

ペースメーカー説

脳幹の視床にペースメーカーの役割を果たす部分があり、それによってリズムが制御されているとする説です。
なお、視床の中のどの部分がペースメーカー的な役割を果たしているのかについても、いくつかの説があります。

最後に

いくつかの仮説を紹介しましたが、実はα波の律動性がどのようにして生まれるのかは、はっきりとは特定されておらず、先ほどの仮説で説明したいくつかの要因が組み合わされることで律動性が生まれるのではないか、とも考えられています。

ピックアップ記事

関連記事一覧