脳死判定の手続きと脳波計の感度について

診断用機器

はじめに

我が国においては1997年に臓器移植法が施行され、書面による本人の意思表明があれば、脳死と判定された場合に他者へ臓器を提供できるようになりました。
その後、2010年に行われた臓器移植法改正以後は、本人の意思が不明なケースであっても家族の承諾があれば臓器を提供できるようになっています。
これにより、同改正以後は脳死状態となった人が15歳未満の場合でも、家族の承諾があれば臓器を提供することが可能となりました。
ところで、臓器提供の前提となる「脳死の判定」に関しては、その手続きが法的に定められており、その中では脳波計が重要な役割を果たしています。
それについて以下で見ていくことにしましょう。

脳死判定の手続きと脳波計の役割

そもそも「脳死」とは、呼吸や循環といった生存に不可欠な機能を司る脳幹や、大脳をはじめとする脳全体の機能が不可逆的に停止した状態のことを指します。
したがって、それを判定するための手続きは、主に脳幹や大脳の状態を調べるものとなっています。
その判定の項目は以下の通りです。

1.深いこん睡状態にある
 →脳幹の機能が痛みに反応しない、大脳が痛みを感じない

2.瞳孔が散大(直径4mm以上)したままで固定されている
 →脳幹の機能が光に反応しない

3.反射反応が消失している
 →脳幹の反射機能が消失している

4.脳波が検出されない
 →大脳の機能が停止している

5.自発呼吸の停止
 →脳幹の呼吸機能が停止している

6.6時間(6歳未満の場合は24時間)以上経過後、再度1~5までの検査を行い状態が変わらない
 →状態が不可逆的である

以上の項目のうち、脳波計が使用されるのは4番目の検査です。
脳波が検出されない、つまり大脳の機能が停止している状態はECI(Electro Cerebral Inactivity)と呼ばれ、これを確認するためにまず5~10分間にわたって通常の感度(10μV/mm)で脳波の記録が行われます。

ただ、この状態でECIに見えたとしても、実際には脳波計の感度を上げれば観測することのできる低振幅の脳波が存在していることがあり、そうであれば「脳死状態」とはいえません。
このため、次に脳波計の感度を5倍(2μV/mm)に上げて30分間、脳波の記録が行われます。
なお、通常感度のときも、高感度のときも、測定はそれぞれの耳に対して3回以上大声で名前を呼びかけ、かつ、顔の特定の部分に痛み刺激を与えながら行われ、脳波計上でそれに対する反応が見られないことが確認されます。

最後に

以上のような判定は「法的脳死判定」と呼ばれ、臓器移植に関与せず、かつ脳死判定経験のある医師2名以上によって行われます。
そして、6番目の項目にもあるように2回目の判定で反応(変化)が見られなかった場合に脳死と判定され、その2回目の判定終了時刻が死亡時刻とされるのです。

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