心電図で確認する変行伝導

診断用機器

心電図を見る上で、「変行伝導」という言葉を耳にすることがあります。上室部からの電気的刺激が心室に到達した時点で、心室内刺激伝達系が先行する心周期の興奮から回復しきれず不応期(興奮が伝わらない再興奮のための回復状態)の時、電気刺激の心室内伝搬が遅くなり脚ブロック型のQRS波形になることを「変行伝導(aberration)」といいます。
今回は、「変行伝導」を理解するうえで重要になる心臓の仕組みや、心電図をチェックするときの注意点を解説したいと思います。

不応期

「不応期」は、「変行伝導」を理解するうえで非常に重要なファクターです。
「不応期」とは心筋細胞の仕事を行っている間、刺激に反応しない期間のことであり、すべての刺激に反応しない「絶対不応期」と、強い刺激には反応する「相対不応期」に分けられます。心室の「不応期」はQRS波とT波の頂点までの間隔を「絶対不応期」、T波頂点から収束までの間隔が「相対不応期」になります。

変行伝導の起こりうる条件

変行伝導は次のような条件で起こりえます。

・上室性期外収縮(主に心房性期外収縮PAC or APCに伴う変更伝導)
PACは心電図で良く確認される「不整脈」で幅の狭いQRSが発生します。しかし、「変更伝導」が起きると、先行P波がある状態で幅の広いQRSが確認できることが稀にあります。
心室内刺激伝達系の中で右脚の不応期は一番長く、V1、V2誘導でチェックするとrSR型の右脚ブロック形の波形で確認することがよくあります。

・心房細動(AF or af)に伴う変行伝導
心房内の各所で刺激が発生し、心房の収縮が正常に行われなくなる状態を心房細動と呼び、めまいや心不全、脳梗塞の原因となったりします。R-R間隔が不規則になるのが特徴です。心房細動を持ちながら、心室頻脈もあると診断された方には、「変行伝導」が確認されることが多いです。

・上室性頻拍に伴う変行伝導
上室の異所性興奮が通常の周期より早く起こる状態です。起源P波が早く表れ、正常なQRS波が続きます。心房に負担のかかる肺疾患や心臓弁膜症などにより引き起こされます。悪化すると心房細動に移行する危険性があります。

まとめ

「変行伝導」には「心室内変行伝導」といった一時的な伝導障害もあり、すべてが危険であるというわけではありません。しかし、QRS波が心室性期外収縮と似ていたり、上室性の頻脈時にQRS幅が広いため「心室頻脈」と誤診されることもありますので、怪しいと思ったらV1、V2誘導心電図を確認しておきましょう。

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