【脳波計】医療機器としての進歩

診断用機器

動物の中でも人間の脳は優れていると誰もが認めることでしょう。しかし、この脳の研究がなされ始めたのは今から90年前のことで、人間の脳波が発見されたからです。その脳波を計る脳波計がどのような進歩を見せてきたのかをご紹介します。

真空管時代

昭和30年代は真空管を使用した脳波計が使用されていました。真空管の時代の脳波計は、電池の数も多く、そのため「発生する硫酸ガスの障害も大きいから電池全部を被覆するようにしている」と論文には記されています。

増幅器は現在から見れば簡単なものであり、そのため当時は種々の雑音から逃れるために苦労をしています。機械的振動に対しては「増幅器の載台は地下からコンクリートで固め」とあるほどです。

初段真空管の雑音については、多数の同一球の中から実測して少ないものを選んだりしています。また、「50Hzのresonant filterを出力回路に並列に挿入する」「湿度が重大な影響を与えるから湿度を記録しておかなければならない」「充電直後や放電終了近くの蓄電池は電圧変動が多いので適さない」「真空管点火後約15分間は不安定だから使用しない」等々、取扱上困難が多かったようです。

トランジスタ・マイコン脳波計

脳波計は、交通傷害のうちでも最も恐ろしいとされる頭部外傷の診断に必要不可欠とされるものとして、その重要性はますます認識されるようになってきます。

それまでの脳波計は主として、精神・神経科領域で使用されていた関係もあって、装置は大型の据置型であり、可搬性がなく、シールドルーム内でなければ商用ハムの混入があって使用できませんでした。

救急医療の領域、あるいは、脳外科の領域で使用するためには、小型で軽量で可搬性に富み、シールドルーム外でも使用できるものでなくてはならないと、小型軽量化を求められていました。

小型軽量化するためには、増幅器をトランジスタ化しなければなりませんが、脳波計の入力インピーダンスが5MΩ以上を必要とし、かつ内部雑音を3μVp-p以下、できれば2μVp-p以下にしなければならないため、一般のトランジスタを使用したのでは、上記の使用が達成できず、トランジスタ化は困難視されていました。

しかし、低雑音医用増幅器を一部改良して、脳波計用増幅器として十分な性能をもつ全トランジスタ化増幅器を開発するとともに、ハム除去回路を開発し、シールドルーム外の一般病室で使用してもハムの混入に煩わされることなく、脳波が測定できるようになりました。

電子ファイリング脳波計

現世代の脳波計は、脳波を頭部から電極を用いて導出し、増幅した脳波形、および計測条件等をディスプレイ画面上に表示するとともに、ハードディスクあるいは光磁気ディスク等の保存媒体に記録し、再生できる装置です。ペンレコーダーを組み込んだ構成では、脳波波形を記録用紙に記録することができます。

測定時には、電極接続箱から生体電気信号(デジタル信号)の波形データを演算処理し、感度処理、モンタージュ処理およびフィルタ処理ができます。

得られたデータは、モニターに波形として表示するとともに、メインユニットや外部記憶装置に出力され、再生時には、外部記憶装置に記憶されている脳波データを呼び出して演算処理し、画面表示などが行えます。

まとめ

脳波計の進歩からも見てとれるように、これからの医療機器は、情報通信機器・技術を用いた、より進歩した機器となることでしょう。在宅医療や広域遠隔治療の更なる開発により、患者の身体や環境に配慮した医療機器技術が貢献する時代が来ており、それに伴って医療従事者の負担も軽減するかもしれません。

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