心電図から判別される心室内変行伝導の特徴について

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心臓の鼓動が通常より早い動悸の状態は、特に病状がなくとも日常的に現れるものです。この状態を心電図で測定すると、通常より異なる波形を描き出し、時には心室内変行伝導の特徴も見られます。それはどのような状態を表し、心電図波形にどのような影響を及ぼすのか、見ていきたいと思います。

心臓および心電図の基本

心臓は、全身に血液を循環させるポンプに相当する臓器です。その働きは左右心房および心室が収縮・拡張することで行われ、その動きは心房・心室各部の心筋が緊張および弛緩を繰り返すことによりなされるわけです。

心筋の緊張は、電気的な刺激を受けて生じます。心臓を拍動させるための電気的刺激は洞結節で発生して心房の収縮を起こし、房室結節→ヒス束→左脚および右脚→プルキンエ線維へと伝達され、心室を収縮させます。

その電気的反応を電位差として検知し、縦軸を電位差・横軸を時間とする座標上に記録したものが心電図です。

心電図では、拍動に伴って心臓内に生じる電気刺激の伝達の様子が波形として表されます。
標準的な心電図波形では、最初に心房の収縮および拡張を示すP波が生じ、次いで心室の収縮を示すQRS波、心室の拡張を示すT波、1回の拍動の終了を示すU波の順序で発生する形となり、これが1回の心拍について電気的に捉えたデータとなるわけです。

心房性期外収縮に見られる変行伝導

通常、拍動は一定の間隔で周期的に起こる電気刺激すなわち洞調律によって生じます。
しかし時として、周期から外れたイレギュラーな間隔で電気刺激が生じ、それに伴って心臓が活動し動悸や不整脈が生じる場合もあります。そのうち、洞調律よりも早いタイミングで心房からの電気刺激が起こるケースを心房性期外収縮と呼びます。

心房性期外収縮には幾つかのパターンがあり、そのうちの1つが心室内変行伝導に伴う心房性期外収縮です。

心室内変行伝導とは、心室内の電気的興奮がまだ治まっていない状態で、次なる電気刺激が心室に入ってきた際に生じる現象です。先行して生じた電気的興奮の途中で心室が収縮状態にある時、心筋は新たな電気刺激に反応できない不応期にあります。

そのため、新たに入ってきた電気刺激は心室内で遅延状態となり、結果として心室内で電気刺激の伝播が変行した状態となるわけです。

この状態について心電図では、QRS波の幅が通常より広くなっている形状で表されます。すなわち心室内変行伝導に伴う心房性期外収縮では、心室の収縮時間が通常より長い時間に及んでいると言えるわけです。

心室内変行伝導は不整脈の要因の1つですが、通常はほとんど自覚症状が見られません。
ストレスや睡眠不足、カフェインもしくはアルコールの過剰摂取など、特に病気と見做されない原因で生ずるケースもあります。

しかし、出現の頻度が高いようであれば何らかの疾患に伴う反応が疑われるため、より詳しく検査する必要があるでしょう。

まとめ

以上のように、心室内変行伝導とは、心臓の拍動を起こす電気刺激が心室部で遅延する現象を指します。心電図上ではQRS波の間隔が広くなる特徴が見られ、心室の収縮が通常より長い状態を意味していること、日常生活でも見られる反応であるが、出現頻度が高ければ何らかの病的原因が考えられること、について確認してまいりました。

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