CT装置使用時における流行疾患の感染対策

診断用機器

全ての医療機器において、患者さんおよび医療従事者の安全確保のため疾患の感染対策実践は欠かせません。言うまでもなく、X線により体内画像を描写するCT装置においても同様です。感染予防のためのCT装置使用時の対策にはどのようなものが考えられるでしょうか。

CT装置の概略

CT装置は、患者さんが横になる寝台のクレードルと、X線照射を行うトンネル型のガントリ、装置全体の操作とデータ解析・画像表示を行うコンソール部の3つで構成されています。これらを操作することにより、立体的視野から観測した体内の状態が画像として得られます。

検査実施に際しての感染対策

感染症を患っているおそれのある患者さんに対してCT検査を実施する場合、どのように対策を講じていくべきか、検査の流れに併せて見ていきたいと思います。

検査前

まず、患者さんをCT検査室へ入室させる前に準備すべきことがあります。大まかに言えば、CT装置および検査室内・検査を実施する医療者・患者さん、その3者について行うべき感染予防対策に当たります。

◆CT装置および検査室内の感染対策
CT検査室内の換気を充分に行い、空気中に浮遊する菌のリスクを低減する必要があります。換気扇送風量が1時間当たり1500立法メートルである場合、検査室の容積90平方メートルにつき、適切な換気時間は、サージカルマスク着用の場合には5分、未着用の場合には26分とされています。

これを参考に、実際の検査室の状況に合わせて換気量を設定すると良いでしょう。CT装置について、検査中患者さんが横になるクレードル上には吸水・防水タイプのディスポシートを敷いておきます。

加えてCT装置およびその他室内の備品について、患者さんと接触する可能性のある箇所および検査実施者が触れる箇所をビニール等で覆い、本体への菌の付着を防止します。

◆検査実施者への感染対策
検査を実施する医療者は、キャップ・フェイスシールド・N95マスク・防水性の長袖エプロン・防水性手袋・シューズカバーを装着し、感染防護体制を取ることが必要です。また、それらを装着する手順についても留意しなければなりません。

装着順序としては、次の通りです。始めに手洗い消毒を行い、長袖エプロンとN95マスクを装着します。その次にキャップを被ります。その際、頭髪を全てキャップ内に納め、耳まで覆うようにしなければなりません。

次にフェイスシールドを装着し、その後履物をシューズカバーで覆います。その後、再度手洗い消毒を行い手袋を装着します。手袋を付けたまま手指消毒を行い、長袖エプロンの先端部分に空いた穴に親指を通し、その上からもう1枚手袋を装着します。

そうすることで、作業中袖口が自然にめくれるのを防ぐわけです。2重に手袋を装着した状態で手指消毒を行えば、これで防護体制が完了となります。これらを装着した後は、検査が終了し脱衣するまで手でマスクや顔に触れないことが重要です。

◆患者さんへの感染対策
CT検査を受ける患者さんには感染拡散防止用のマスクを装着してもらいます。CT室搬入の際には感染者経路を使用します。事前に院内の経路を感染者専用と一般用に区分けし、相互の立ち入りを禁止する措置を取っておくべきでしょう。

検査中

患者さんにはビニール被覆などで防護した箇所に限定して移動してもらい、ディスポシートを敷いたクレードルの上に乗っていただきます。仮に、その場に立ち会う医療スタッフが患者さんに触れた場合、以下の措置が必要です。

まず、2重手袋の上から手指消毒して上側の手袋を外します。次に、別の消毒液で内側の手袋の上からさらに手指消毒し、その上から新しい手袋を装着します。この手順を踏むことで、患者さんに接触した2重手袋から菌が拡散されるのを防ぐわけです。

検査後

検査終了後、患者さんには入室時と同じ経路で退室していただき、その後、検査室内の後処理を行います。まずクレードル上のディスポシートおよび室内各部を被覆したビニールを取り外して廃棄します。

次に、CT装置およびその他室内備品について、消毒用アルコール薬液を用いて清拭を行います。その際、噴霧式スプレーを用いず、布巾に含ませる方法で消毒液を使用しましょう。スプレー式を用いると薬液が装置内に入り込み、部品の腐食や故障につながるおそれがあるためです。

同じ理由で、清拭時にはCT装置の表層カバーの継ぎ目やコネクタ部分に消毒液が付着しないよう注意が必要です。CT装置の機種によっては、表面の材質により使用できない消毒液もあります。

事前に取扱説明書およびメーカー問い合わせなどにより使用可能薬液を確認し、用意しておくことが肝要です。患者さんからの装置への付着物などがあった場合、消毒の前に付着物の除去および清掃が必要となります。

その際の使用可能薬液についても合わせて事前確認と準備を行っておくべきでしょう。清掃および消毒措置の終了後、新しいディスポシートの設置および各部ビニール被覆を行います。

なお、患者さんが感染拡散防止用マスクを装着していなかったなど、検査時の状況によっては、空気中の菌拡散が懸念されるため、一定時間の換気が必要です。

まとめ

以上のように、CT検査時における感染症防止策について見てまいりました。CT検査を実施する医療施設内の状況により、具体的な部分は変わってくるものと思われますが、検査室内の装置および環境・医療従事者・患者さん、といった3つの観点から対策を講じることが基本と言えるでしょう。

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