MRI画像の1種、ディフュージョンとは

診断用機器

磁気を利用し、人体内部の様子を画像に表すことができる医療機器・MRI。そこから得られる画像は、撮像方法により幾つかの種類に分類することができ、その中の1つにディフュージョン(=DWI)が挙げられます。これは、どのような特徴を持つ画像なのでしょうか。

MRI検査の基本原理

MRIは、磁気共鳴という現象を用いて、人体を傷つけることなく体内状態を視覚的に写し出す検査方法です。人間の身体には多くの水分が含まれ水分子は酸素と水素の原子から構成されています。一般的な自然環境下において、水素原子は磁気的に一定の方向を取りません。

そこへ、MRI装置によって強力な磁気を当てると、人体中の水分に含まれる全ての水素原子は磁気的に同一の向きを取ります。その状態の中で電磁波を当てると、水素原子はさらに別の向きへと変わります。その後、電磁波を停止すると、水素原子は磁力の作用による向きに戻ろうとします。

その時、水素原子の向きが戻るスピードは、その水素原子を含んだ水分が存在する細胞組織や器官によって異なります。その戻りの速さの違いを信号として検出し、解析処理によって画像へと変換することで、体内の様子が写し出されるわけです。

主なMRI画像とディフュージョン

MRI検査では、観測する人体部位について、幾つかの異なるタイプで画像を得ることができます。一般的には、T1強調画像とT2強調画像の2種類が汎用的に用いられる主なタイプと言えるでしょう。

T1の画像では、脂肪組織は白色・水分の多い液性成分は黒色となって表されます。解剖学的な人体内部の構造を把握するのに適した部類です。

T2の画像ではT1とは逆に、水分が白く、脂肪組織が黒く写し出されます。通常の体内組成とは異なる病変などを探し出す際に有効とされています。

これらMRI検査の基本となるT1・T2の画像以外にも、異なる形式の画像があり、その中の1つに位置するのがディフュージョン(diffusion weighted image)です。頭文字を取ってDWIと言われ、拡散強調画像とも呼ばれます。

ディフュージョンは、水分子のブラウン運動すなわち水分子が拡散する動きの度合を基準に解析された画像に相当します。水分子の拡散運動が制限されている箇所において白色となり、それ以外では薄暗く表示されるという特徴が見られます。

ディフュージョンの特性

ディフュージョンによる拡散強調画像は、何を目的として撮られるMRI画像なのでしょうか?主な用途としては、急性脳梗塞や数種のがんの診断が挙げられます。

急性脳梗塞では、細胞浮腫の発生に伴い細胞外液腔が狭くなる作用が現れます。つまり細胞外液腔にある水分子のブラウン運動が抑えられる状態となり、それによって拡散強調画像で該当箇所が白く写し出され、発見されるというわけです。

また、がん細胞には細胞どうしの密度が高いという特徴が見られます。そのため、細胞間の隙間が狭くなり、それが拡散強調画像において水分子の拡散抑制を示す白色で表されることになるわけです。

前立腺がん・腎盂尿道がん・膀胱がんなど、主に泌尿器系に生じるがんの診断・判別に用いられます。

まとめ

以上のように、MRI検査の基礎的部分について再確認しながら、ディフュージョンすなわち拡散強調画像は水分子の拡散状態を基とした画像解析方法であることを調べてまいりました。主に脳梗塞などの脳疾患や泌尿器系のがんについて、発見および診断に用いられる手段に相当します。MRI検査のみならず、様々な医療機器の仕組みについて知識を深めることで、より適切な医療に活かしていくことができるでしょう。

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