MRI検査における磁場の影響

診断用機器

【はじめに】
まず「MRI」についてですが、これは「Magnetic Resonance Imaging」の頭文字を取った略称で、訳すと「核磁気共鳴画像」という意味です。
レントゲンやCTなどはX線を使っているので、被ばくの心配があります。
ではMRIはどうでしょうか?
今回はMRI装置が発生する磁場の人体に与える影響について見ていきましょう。

【磁場の生体影響研究の必要性】

私たち人類は、古く太古の昔から自然界に存在する磁場(数十マイクロテスラ)の中で存在してきました。
近年になり超伝導利用技術などの開発が進み、自然界にある磁場とは比較にならないほどの強い磁場を発生させ、そして使用することが可能になりました。核融合用超伝導磁石、超伝導電力貯蔵装置、磁気浮上列車(リニアモーターカー)、核磁気共鳴装置などがその例になります。
これから先の人類の未来は、今まで経験したことのないような高磁場にばく露される機会が増加することは、疑いようのない事実です。
では、医療用のMRIはどうでしょうか?
「核磁気共鳴画像」と呼ばれるぐらいですから、やはりある程度の磁場は発生します。被検者は、2テスラ前後の高磁場にばくさらされることになります。これはかなりの高磁場になります。
我々にとって関心の高い「磁気浮上列車(リニアモーターカー)」では、客室内の磁場が20ミリテスラ以下になるようにシールドされていると言われています。ミリテスラですから、自然界の磁場と比較すると、その違いは大変大きくなってきます。
このような状況にもかかわらず、磁場の人体への影響についての知識は極めて乏しく、磁場ばく露のリスク評価、ないしは的確な安全基準の設定が整備されていないのが現状なのです。

【磁場の生体影響に関する研究】

電磁場の生体に関する研究は、1960年からアメリカとロシアを中心に急激に増加してきています。1986年までの研究は、WHOの「Environmental Health Criteria 69 “Magnetic Fields”1987」にまとめられています。
我が国では、1981年に科学技術庁「磁場の生体及び環境に及ぼす影響についての研究推進連絡会」が設けられ、1984年からは文部科学省研究費特別研究「環境科学」で磁場の生体影響が取り上げられるようになりました。
また、研究結果が発表されている主な学会は、環境科学会、電子情報通信学会、電気学会、日本ME学会、日本磁気共鳴医学会、日本原子力学会、日本保健物理学会など多岐にわたっています。
しかし、残念なことに各省庁間の連携はなく、また異なった学会に所属する研究者間の交流も十分ではありません。
そこで提言の第一として、各省庁で行われている調査研究の横の連携を取り合う協議会の設立と、各学会、または研究機関単位でなされている研究成果をデータベース化して、各研究者が自由に利用できる組織づくりが急務となっています。

【まとめ】

MRIはレントゲンやCTとは違い、自然界における磁場と比較すると100万倍近い磁場に晒されることになりますが、X線をまったく使用しないため被ばくの恐れはありません。
医療上の利益をみても、MRIは現代医療には欠かせないものとなっています。
医療現場では、患者さんの保護を確保するためにも、全身ばく露の上限値は4テスラとすることを推奨しています。この値までは胎児や乳児への影響を含め、有害な影響はないとされています。安心して使用しても問題ありません。

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