脳波計の弁別比とは?

診断用機器

【はじめに】
脳の中には電気が流れており、その電気活動を記録して脳に異常がないか調べるのに脳波計を
使います。脳波計で検査をするときに「弁別比」という言葉が出てきます。弁別比とはどういう意味なのか、脳波計のおおまかな説明とともに今回はお伝えしようと思います。

【脳波計でわかるもの】

脳波計は、てんかん・脳血管障害・脳腫瘍・頭部外傷による中枢神経系の状態を診断する補助をします。
また最近では脳死判定や睡眠時無呼吸症候群の診断に利用することもあります。

【弁別比とは】

脳波計には従来のペン書き式脳波計(ペンで記録する)とデジタル脳波計があります。
しかしどちらの脳波計を使っても、そのままだと脳の発する電気は大変に弱いので、ノイズが入ってきやすくなり、正確な記録が取れません。

そこで脳波測定では差動増幅器を用いて同相入力電圧を抑制し、電気信号を増幅させ記録します。
このとき出力信号と等しい振れの大きさを与える同相入力と、その反対の逆相入力の比のことを「弁別比」と定義します。

この弁別比の能力が高いとノイズ、交流障害を取り去る能力が高いといえます。
通常は外部と遮断されたシールドルーム(※注1)内で脳波測定を行います。
最近ではこの差動増幅器の能力が高くなり、簡単な脳波測定の場合シールドルーム必要がない場合もあります。(※注2)

※注1:外部からの電波、磁場の侵入を防ぎ、内部からの情報(電波、磁場)も遮断するようにできている部屋のこと。
※注2:最近ではポータブル、持ち運び可能な脳波計もあり普通の病室で測ることできます。

【脳波測定でノイズとなりやすいもの】

・交流障害(ハム)…電線や電源などからくる電気
・静電誘導…静電気
・周辺機材によるもの…点滴、輸血ポンプの作動
・レスピレーター…患者さんの呼吸などによる体動
・周辺の人やもの…人の動きやカーテンの揺れなど
・脳波計での原因…電極装着の不備、リード線の重さが電極に影響を起こす

これらを防止するために下記の対策を行います。
・シールドシートを使用し、アースをする
・ベッドアースをとる
・可能な2Pコンセントを抜く
・接触抵抗を下げる
・機器の位置を変えたり、患者さんから離したりする

【まとめ】

心電図の測定とは異なり、脳波の測定は極めて小さな動きをとらえる必要があります。そのために弁別比の能力の高い差動増幅器を使用するなど脳波計自体のしくみがあり、またその周辺の機器、人、ものといったものに気をつけるなどの細心の注意を払います。
最近ではポータブル脳波計も出てくるなど、より簡単に測定がしやすくなるような開発も進んできており、近い将来は複雑な脳波測定も身近で簡単にできるようになるでしょう。

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