CT装置の歴史に学ぶ医療技術の進化

診断用機器

X線を照射し体内の断面図を連続して撮影することで、正確な患部の検査ができるCTスキャン装置ですが、歴史は意外と古く日々進化を続けています。CTの元となったレントゲンの発明と併せて、CTの歴史を遡ってみましょう。

X線の始まり

X線は1985年に、ドイツのヴュルツヘルム・コンラート・レントゲンにより発見されました。放電管の実験を行っていた際に、放電管とスクリーンの間に物体を挟むと物体の影が映ることに気づいたのが始まりです。

X線は波長が短い電磁波であり、可視光線と比べてエネルギーが高いです。高エネルギーの電磁波は体内を通過するため、それを利用し通過したX線を映像表示します。

CTスキャンの産声

CTスキャンの原理は、多方向からX線写真を撮影し断層を1枚のCT画像に合成するものです。1967年にCTスキャンを考案したのが、イギリスのゴッドフリー・ハウンスフィールドであり、1972年に同じくイギリスのEMI社から開発・発売されました。ハウンスフィールド氏はノーベル生理学・医学賞を受賞しています。

世代別CTの特徴

CTは主に時間短縮を目的に進化してきました。開発初期のCTスキャンは1回のスキャンで4分近い時間がかかっており、解決のため様々なスキャン方式が開発されました。

Translate/Rotate方式(ペンシルビーム)

頭部のスキャン専用で、検出器を平行・回転運動を繰り返し撮影します。検出器のX線は細くシングルペンシルビームと呼ばれていました。

Translate/Rotate方式(ナロウファンビーム)

検出器を10~20個まで増やし広がりを持つ扇状にすることで、スキャン時間を20~120秒まで短縮することに成功しました。ファン角度は3~15度。

Rotate/Rotate方式(ワイドファンビーム)

大量の検出器が被写体をカバーするように配置することで、回転運動のみでスキャンできる方式です。CTスキャンの多くに採用されてきました。

Stationary/Rotate方式(ワイドファンビーム)

検出器を軌道の外側にリング上に配置することで、X線のみの回転で撮影できる方式です。散乱線が多い問題点があり、現在は採用されていません。

Nutate/Rotate方式(ワイドビーム)

Stationary/Rotate方式の一種で、X線管の回転に応じて2000個以上の検出器を章動させることで、被写体と検出器の距離を短縮し、検出阻止を抑え高分解能を得ることに成功しています。

電子ビーム偏向型

電磁石を使用し電子制御でX線を制御し、電極に当てていく方式です。心臓静止画像も撮影可能で、検査時間も0.05秒と大幅に短縮されました。

まとめ

CT装置は日々進化し続けており、高精度でかつ短時間での検査による被ばくリスクの軽減を実現しています。各方式には特徴があり、疾患の場所により装置を使い分けることで、適切な検査を行うことができます。

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