レーザーメスに活用されているレーザーの原理とは

治療用機器

医療現場において活躍するレーザーメス。金属刃物のメスとは異なり、レーザー光線の熱を利用して切開するという特徴を有します。そのレーザー光線とは、どのような原理で発生するものなのでしょうか。基本的な部分から順を追って見ていきたいと思います。

レーザーメスとは

レーザー光線により、人体を切開することを可能とした医療機器・レーザーメス。一般的な金属製メスとの大きな違いは、切開時の出血が抑えられる点と言えるでしょう。レーザー光線の熱により、切断面で血液の凝固作用が生じ、これが止血効果をもたらすわけです。

出血を抑えられれば、治療を受ける患者さんへのダメージが軽減され、過度な負担が生じません。そのような利点から、腫瘍の除去を始め、眼科・歯科・美容外科など幅広い分野で活用されています。

レーザーとは

「レーザー」とはどのようなものなのでしょうか。大まかに言えば、指向性・単色性・可干渉性を持つ光、と表されます。光とは本来、空間を通過する波です。通常の光を波として捉えた場合、波の向かう方向・波長・位相がバラバラな状態となっています。

(注釈:波長とは、波の振幅1セットの長さを意味し、光の場合では視覚的に色として認識できる要素です。位相とは、波の位置のことを指し、波同士の振幅の揃い具合を意味します)

他方、レーザーでは、光の方向・波長・位相が一定に揃えられています。言い換えれば、光に指向性・単色性・可干渉性が与えられていることを示し、それに伴い高いエネルギーを持つこととなります。これを利用することによりレーザーメスのように熱で物体を切ることも可能となるわけです。

レーザーメスでレーザーが発生する仕組みについて

レーザー光線はどのような仕組みで発生するのでしょうか。実のところ、その名称自体が、原理を端的に示すものとなっています。レーザーという名称は「Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation」の頭文字から付けられたものであり、これを訳すと「誘導放出による光増幅放射」となります。

その言葉はどういうことを意味しているのか、確認していきたいと思います。まず、誘導放出について見ていきましょう。これには、あらゆる物質を構成している原子が関係しています。原子は、中心にある原子核の周りを、元素番号と等しい数の電子が周回している構造になっています。

電子は原子核からの距離に伴いエネルギーを持っており、電子の数に伴いその周回軌道が幾層かに分かれています。その原子に外部から光エネルギーが入ると、それを受けて周回軌道の最外層にある電子がさらにもう1段階上の軌道へと移ります。

これを励起状態と言います。励起状態となった電子は元の軌道(基底状態)に戻ろうとし、その際に受けた分のエネルギーを光として放射します。これを自然放出と言います。その一方で、外部から入射した光が作用して励起状態から基底状態に戻るケースもあります。

これが誘導放出を意味します。それによって生じる光は、外部から受けた光と同じ方向・波長・位相を持つものとなります。つまり、入射した光と放射された光が合わさってエネルギー的に強化されるわけです。

このように方向・波長・位相を同じくする光を増やすことにより、レーザー光線が作り出されます。誘導放出を多く発生させるにはまず、励起状態の電子を増やすこと、すなわちポンピングが必要です。

励起状態の電子が多くなれば、それによって放出される光も多くなります。さらにその光を増幅させることによって、高いエネルギーを持つレーザー光線が発生するわけです。この原理を応用した機器が、レーザーメスなどのようなレーザー発振器となります。

レーザー発振器は主に、媒質をミラーで挟んだ内部構造となっています。励起状態にする物質を含む媒質に励起光を照射。それによってポンピングを起こさせます。そして誘導放出された光をミラーの反射で増幅。さらなる連鎖的な誘導放出を促し、レーザー光線を作り出すわけです。

まとめ

以上のように、レーザーとは、励起状態となった電子から誘導放出される光を増幅させたものであることを見てきました。医療機器の仕組みを把握することで、より良い医療に繋げられるかと思われます。原理的な部分を知る上で参考となれば幸いです。

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