ファイバースコープ~全反射を利用した診断用機器~

生体現象測定記録・監視用機器

外からは見えない、患者の体内の様子を映像で確認できる診断用機器、ファイバースコープは現代の医療現場にはなくてはならない存在です。ファイバースコープがある事により、患者の粘膜の様子などをいち早く知る事が出来ます。今回はファイバースコープの構造と原料について解説します。

ファイバースコープの基本的な構造

まず、ファイバースコープの基本的な構造について説明します。ファイバースコープは、高い屈折率の光学ガラス繊維(コア)を、より屈折率の低いガラス(クラッド)で覆うという同心円状の構造になっています。コア部の直径50μm(0.05mm)、芯線の外形125μ(0.125mm)、が標準の規格として定められています。

このコアとクラッドの2重構造により、光の漏れを防いだ5から20マイクロメートルのガラス繊維を4万から15万本束ねた管状の光誘導体がファイバースコープです。ガラス繊維の束の作成時にはドラムを使用して繊維を巻き取った上で切断し、断面を研磨した上でレンズを装置しています。

それぞれのガラス繊維は、芯となるガラスとそれを覆っているガラスの間で、先端部より導入した光を全反射させる事で、他端までその光を誘導する事が出来ます。その間の光量のロスは僅か10%ほどです。

患者の体内にファイバースコープを挿入する際は、菅を折り曲げる必要があります。しかし、光はその性質上、直進しか取れません。先端部度捉えた映像(光)を、管の内部で反射させ、続いて逆方向で更に反射させる、これを何度も繰り返し、光を接眼部まで届ける事を全反射と言います。

管が途中で折れ曲がっていても光の損失量は変わりません。これにより、先端部で捉えた映像を接眼部で詳細に観察する事が可能です。

医療分野以外でも、工業分野、宇宙開発分野、遺跡発掘などの現場で用いられています。

ファイバースコープの原料

ファイバースコープがガラス繊維を束ねてつくられている事は前述したとおりです。石英ガラスを原料としているガラス繊維には、大きく分けて短繊維と長繊維があります。短繊維は短い繊維がふんわりと合わさった物で、長繊維はグラスファイバーと呼ばれ、太さが数ミクロンから十数ミクロン程です。ファイバースコープに用いられるのは後者の方です。

原料に石英ガラスが用いられる以前のファイバースコープでは、先端部で捉えた画像を遠くまで届ける事は不可能でした。現在のファイバースコープでは、より不純物の少ないガラス繊維を用いる事により、先端部で捉えた映像をより遠くまで伝達する事が可能となっています。

グラスファイバーは、数ミクロンから十数ミクロンという細さの”ガラスの糸”と言う事が出来ます。電気の影響を受けない(絶縁性)や熱の影響を受けない(耐熱性)、その他、引っ張り強度、耐薬品性が極めて強いという特徴があります。

まとめ

ファイバースコープは日進月歩で現在も進化を続けています。超小型のカメラを内蔵し、従来のファイバースコープの10倍以上もの解像度で体内を撮影できるようになったビデオスコープや、粘膜の表層構造の微小な変化も観察可能なハイビジョン内視鏡システムが実用化され、安全性と正確性が格段に高まっています。

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