レーザー「メス」とは違う医療機器としての低出力レーザーについて

治療用機器

はじめに

レーザー(レーザー光)とは、電磁波を増幅して人工的に作られた光のことで、狭い範囲に高エネルギーの光線を照射することができ、医療をはじめとするさまざまな分野で広く使用されています。
そのなかでも、医療機器としてのレーザーと言えば、レーザーメスによる外科手術や眼科治療などがよく知られるところです。
これらの治療に用いられるレーザーは比較的高出力のものであり、熱によるエネルギーが切開および止血、凝固といった役割を果たしています。
しかし最近では、このような出力の高いものだけではなく、低出力のレーザーも医療機器として治療に用いられるようになってきました。
今回は、この低出力レーザーについて見ていくことにしましょう。

主流は半導体

レーザーを発生させるには、媒質と呼ばれる「レーザーの素」が必要になります。
なぜなら、媒質内部に存在する原子(電子)のエネルギー状態が変化する際に発せられる光を人為的な方法で増幅させたものが、治療に使われるレーザーであるからです。
その媒質には、炭酸ガスやアルゴンイオン、ネオジウム・ヤグ、半導体などが使われ、低出力レーザーの媒質としては、初期にはヘリウムとネオンの混合気体が用いられていましたが、現在では半導体が主流となっています。

得られる効果

低出力レーザーを照射した部位に対する効果として研究によって明らかになっているものには、主に次のようなものがあります。

  • 傷の治りが早くなる
  • 血流の改善(増加)がみられる
  • 慢性痛が改善される
  • 骨や軟骨の細胞が活性化される
  • 炎症が抑えられる

以上のような作用が期待され、肩こりや腰痛、頚椎症、関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、脳血管障害の後遺症などさまざまな疾患や症状に対して幅広く使用されています。
また、最近では腫瘍(ガン)に親和性のある光感受性物質と低出力レーザーを使った肺がんの治療(光線力学的治療)も行われるようになってきました。

最後に

レーザーメスでは、レーザーの熱エネルギーによる作用がメスとしての機能を果たすわけですが、一般的に低出力レーザーの場合は熱エネルギーではなく、光エネルギーが上記の効果をもたらします。
熱エネルギーによる作用が身体に与えられるわけではないので、レーザー照射時に痛みはなく、副作用も少ないことから安全性の高い治療法として注目されています。
ただし、低出力レーザーがどのようにして効果を発揮するのか、つまりその仕組みに関しては、実ははっきりとはわかっていません。
ですが、先ほど述べたような効果があること自体はさまざまな研究により明らかになっているということから、臨床現場で幅広く利用されているのです。

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