レーザーメスの仕組みについて

治療用機器

手術や切開など、外科的な医療行為において欠かすことのできない器具であるメス。医療技術の発達に伴い、従来の金属製刃物からレーザーメスへと進歩を遂げてきました。レーザーメスはどのような仕組みで機能し、どのような利点があるのか確認していきましょう。

レーザーとは

まず、レーザーメス技術の基であるレーザーとはどのようなものか考えていきましょう。
レーザーという語は「誘導放出による光の増幅」を意味する英文の略語です。これがそのまま原理を要約しているかたちになっているのですが、もう少し掘り下げて確認していきたいと思います。

まず「誘導放出による光」が何のことを指しているのか考えてみましょう。
この世界にある物質は、最小単位的に見れば全て原子によって構成されています。原子は中心にある原子核とその周囲の軌道に位置する電子で成り立ち、これでエネルギー的に安定しているのが常です。

この原子自体に外部からエネルギーを加えると、電子の軌道がより広い範囲へと推移する高エネルギー状態すなわち励起状態へと変化します。しかしながら、この励起状態は不安定であり、原子は電子が元の軌道にある安定した状態へ戻ろうとします。

安定した状態に戻るには吸収したエネルギーを外部に放出しなければなりません。このとき原子は光の放射というかたちでエネルギーを外に出すことになります。
このような仕組み、すなわち誘導放出で現れる光がレーザー光というわけです。

太陽光や蛍光灯など一般に見られる可視光には、三次元的に拡散し、波長が不揃いで波の位相が一致しない、という性質があります。しかしながら、レーザー光は可視光の性質の逆をいくかのような特徴を持っています。拡散することなく直進する指向性を有し、波の波長が一定であり、波の位相的に山と谷が揃っている可干渉性があるわけです。

光はエネルギーの一形態ですが、レーザー光のような性質を持っていれば、これをいくつも合わせる(=増幅させる)ことで、レーザー光のエネルギーを高める(=より強い力を出せるようになる)というわけです。

レーザーメスの構造

レーザーメスは前項のような原理を応用しています。レーザー光の持つ熱エネルギーを刃物のようにものを切る力として利用しているわけです。

レーザーメス装置は、誘導放出を行う原子が詰まった媒質をミラーで挟んだ構造となっています。原子にエネルギーを加える役割の励起光を媒質へ照射すると、媒質内では誘導放出の連鎖反応がミラーによる反射を含みながら繰り返され、メスとして機能するレーザー光が作り出されるというわけです。

また、レーザーメスに使われる媒質には、二酸化炭素などの炭酸ガスとイットリウム・アルミニウム・ガーネットからなる結晶体の2種類があり、前者は炭酸ガスレーザー、後者はYAGレーザーと呼ばれます。

レーザーメス使用のメリットとは

レーザー光の熱エネルギーを利用したレーザーメスには、金属製メスと比較して処置時の出血量を抑える利点があります。レーザーの熱が傷口を固め止血効果をもたらすわけです。
加えてレーザー光による切開では、患部に直接触れることなく治療が行われるため、感染などのリスクも抑えられます。患者さんにかかる身体的負担を軽減できるものと言えるでしょう。

まとめ

以上のように、①レーザー光とはエネルギーを加えられた原子が誘導放出する光であること。②レーザー光には増幅させることでより高いエネルギーを得られる性質があり、その原理がレーザーメスに応用されていること。③レーザーメスの使用で施術に伴う出血が抑えられるなど、患者さんへの負担が軽減されることなどについて見てきました。

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