全反射を利用したファイバースコープから学ぶ内視鏡機器

生体現象測定記録・監視用機器

管状になっている臓器は、疾病になるとまず粘膜の色が変化します。健康診断の際に必須ともいえるような内視鏡ですが、ファイバースコープの登場によって飛躍的に実用性が向上しました。今回は内視鏡の歴史やファイバースコープの仕組みを解説していきます。

内視鏡の歴史

手術前に体の中を診察しておきたいという発想は紀元前からあり、1868年のドイツで金属管を通すことにより生きている人間の胃を見ることに成功し、しばらくしてレンズを多数配置して曲がった状態でも胃の内部を観察できる軟性胃鏡が登場します。

1950年代は先端に豆ランプとカメラのついた患者に負担を与えず、短時間で鮮明な映像が撮影できる「ガストロカメラ」が、国内で完成し後の胃カメラの発展に大きく貢献しました。

そして1960年代、アメリカが開発した「グラスファイバー」により、直接体内を診ることができるファイバースコープが登場しました。グラスファイバーとは、媒体間の光の屈折角が90度になると全反射が起こることを利用して細い管から光を送り込む繊維です。柔軟性に優れているため湾曲した管にも対応し、一端にアイピースと逆の一端には広角レンズを取り付け、モニターを介して体内を診察することができます。

これにより、内視鏡は消化器だけでなく耳鼻咽喉用や気管支といった様々な管状の器官を診察することができるようになり、ファイバースコープは医療現場で必須の機器となりました。

全反射の仕組み

グラスファイバーは中心に高屈折の「コア」、コアの外周には低屈折率の「クラッド」の二重構造で構成された繊維です。透過率の高い石英ガラスやプラスチックといった素材で構成されており、芯線の外形は125μ(0.125mm)、コア部の直径は50μm(0.05mm)が標準の企画で、プラスティックプライマリコートで被覆し耐久性を向上させています。

前述したように先端から照射された光は全反射を利用して、クラッドから漏れることなくコアの中を通過し、管が湾曲した状態でも途切れることなく進行し、ファイバースコープは数万本のグラスファイバーを束ね、全反射を起こし体内を照らし診察したい臓器を移すことができます。

まとめ

ファイバースコープは医療目的だけでなく、災害救助用・工業用など様々な分野で活躍しています。1990年以降は極細のチューブに超小型のCCDを内蔵し、ファイバースコープの10倍以上の高解像度で撮影できるようになった「ビデオスコープ」や、毛細血管や粘膜の表層構造といった微小な病変も診察できる「ハイビジョン内視鏡システム」が開発され、安全面や正確性が格段に向上しました。今後も最先端の技術が導入されることで、今まで対応できなかった難病が治療できる日が来るかもしれません。

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