レーザーメスの原理と構造

治療用機器

手術の際、患部の切開などに使用されるレーザーメス。金属製のメスとは異なり、レーザー光を用いた医療器具です。そのレーザーとは具体的にどのような原理からなるものであり、レーザーメスではどのような構造によって発生するのでしょうか。見ていきたいと思います。

レーザーメスの特徴

レーザー光が持つ熱エネルギーを切断機能に転用した医療機器。それがレーザーメスです。
熱によって切開部分の体組織を凝固させ出血を抑えるなど、使用によって金属製のメスにはないメリットが見出されます。

外科手術のみならず、美容整形・眼科・歯科・皮膚科など、広範囲な手術で活用されるに至っています。

レーザーの原理的概要

あらゆる分野で用いられているレーザーとは、そもそも如何なるものなのでしょうか。簡単に言えば、光の持つ性質を一定に合わせることで高いエネルギーを得た光、ということになります。

光には波としての性質があり、進む向き・波を構成する山と谷(振幅)・振幅1つの長さ(波長)という3つの要素を持ちます。通常の光は、その3要素がバラバラな状態が主です。反面、レーザーではその3要素が一致することで光が束ねられ、高いエネルギー状態が得られます。

つまりレーザーの基となる光は、進む方向が同一(指向性)、波長が同じ(単色性)、波の山と谷の位置すなわち位相が揃っている(可干渉性)、という3つの特徴が備わっているとうわけです。これによって高エネルギー状態が見出され、物体の切断など物理的な働きが可能となります。

光の指向性・単色性・過干渉性を満たすため、レーザーを発生させる際には誘導放出という方法が用いられます。

あらゆる物質は原子によって構成されています。原子の内部構造は、中心にある原子核の周りを電子が周回し、電子の軌道は層のように段階を成しているという状態となっています。
原子には、外部から光が入り込むと電子の軌道が一段階上の層に移動し、その直後、入り込んだ光と指向性・単色性・過干渉性が同じ光を放出し、再び基の階層軌道に戻るという性質があります。

その性質を利用し、指向性・単色性・過干渉性が一致した光を増幅させるのが誘導放出です。レーザーを作り出す発振管には、その誘導放出を引き起こす仕組みが用いられています。

レーザーメスの構造

レーザーを使用する機器では具体的にどのような構造で誘導放出を起こしているのでしょうか。

概略的に言えば、レーザー媒体を出力ミラーで挟み、そこに励起光を入射させるという構造となっています。まず励起光が媒体を構成する原子に入り、そこから指向性・単色性・過干渉性の3性質が同じ光で誘導放出されます。

その光がミラーに反射され、再び媒体原子に入りこみ誘導放出を繰り返すという連鎖反応により、3性質が共通した光の束として増幅されていきます。そうして増幅された光がレーザーとして外部に放たれるというわけです。

なお、用いられる媒質の物質的違いによりレーザーの性質も異なります。レーザーメスの種類は、媒質の違いによって以下のように分類されます。

CO2ガスレーザー

気体である炭酸ガスを媒質に用いたタイプです。これによって生じたレーザーは、水分に吸収されやすい特徴を持ちます。そのため、人体表面から浅い患部の手術において、出血など患者さんへのダメージを最小限に抑えた処置が可能となります。

Nd:YAGレーザー

YAGという、ガーネットとアルミニウムとイットリウムの3元素からなる結晶を媒体としたタイプとなります。水分への吸収率が低く、体内深部組織の手術に適しています。

半導体レーザー

構造的に、半導体に電流を加えることでレーザーを発振させるタイプとなります。小型化が可能であり、細部の精密な手術に適しています。

まとめ

以上、同じ性質の光を束ね高エネルギーを得たものがレーザーであるという基本を抑えながら、レーザーメスの構造とそれに用いられている原理について確認してまいりました。レーザーメスの種類によって特徴も変わるため、手術内容に照らし合わせて最適なタイプを使用することが肝要と言えます。

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