心電図検査の所見・時計回り回転および反時計回り回転とは

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心電図検査の所見で、心臓長軸の時計回り回転、もしくは反時計回り回転という結果が示されるケースがあります。これらは、心臓がどのような状態にあるのを意味しているのでしょうか。関連する心電図の基本的事項を抑えつつ、確認していきましょう。

心臓長軸の時計回り・反時計回りとは

結論から言えば、これら所見は心臓の位置について示すものとなります。時計回りであれば、心臓が正常な位置より右回りすなわち時計の針が回転する方向にあり、反時計回りであれば、左回りすなわち時計の針の回転と逆方向に位置している、ということを意味しているわけです。そのことが、心電図検査によってどのように把握できるのか、そのメカニズムについて見ていきたいと思います。

心電図の基本

全身に血液を循環させるポンプのような役目を果たす心臓は、その大部分が筋肉質の心筋で構成されています。心筋が緊張および弛緩を繰り返すことで、血流を生じさせる心臓器官である左右心房および心室が収縮および拡張し、これによって血流を生じさせるわけです。

このとき、心筋に緊張および弛緩をもたらすのは、心臓の1器官である洞結節から発生する電気刺激です。その電気の流れは、洞穴節→房室結節→ヒス束→左脚または右脚に分岐→プルキンエ線維へと伝播していきます。

その電気的反応を電位差として検知し、時間経過に伴う変化を記録することで、心臓の状態を知るのが心電図検査の目的に当たります。

心電図波形

心電図は心臓の電気的反応を表す電位差を縦軸、時間を横軸として記録されます。心臓が拍動するごとに各器官の心筋が連続的に緊張・弛緩をなし、その際の電位差の変化は複数の波の集合が周期的に繰り返される形状を示します。これが心電図波形です。

このとき見られる波の集合は、心房の収縮および拡張を表すP波、心室収縮に伴う電気刺激の伝播を表すQRS波、心室の拡張を表すT波、拍動1回の終了を示すU波から構成されます。

そのうちQRS波はQ波、R波、S波の3つの波に分けられ、心室の周りを覆うように伝播する電気刺激の流れを表すこととなります。

12誘導心電図

心電図波形を形作る電位差は、被検者の左右手首足首4箇所と、心臓外周の胸部6箇所に電極を取り付けることで検知されます。右足首の電極はアースとして除外し、残り9箇所の電極から12区間で電位差を検知しそれぞれで心電図を記録するわけです。

この方法を12誘導心電図と言い、手足首3箇所の電極を用いた四肢誘導と、胸部6箇所の電極を用いた胸部誘導に大別されます。

四肢誘導は、2電極間を結ぶ双極誘導3通りと、心臓の電気的中心と各電極を結ぶ単極誘導3通りに分かれ、胸部誘導については全てが単極誘導となります。

心電図では、電位差を意味する縦方向について、基線となる0から上方向がプラス、下方向がマイナスとなります。これは単極誘導において、電気反応が電極側に近づくほどプラスへ振れ、遠ざかるほどマイナスへ振れることを表します。

これによって、電気刺激がどちらに向かって流れているのか知ることができ、そのデータから心臓の運動や形状が解析されるわけです。なお、双極誘導についての向きは、どちらか一方の電極をプラス、他方の電極をマイナスと定義付けることとなります。

移行帯

心臓長軸の時計回りおよび反時計回りについては、胸部誘導から判別されることとなります。胸部誘導では、人体を正面から見た際の心臓外周に沿って、胸骨右縁から第5肋間鎖骨中線上まで、すなわち胸板から左脇下にかけて6箇所に電極を取り付け、それぞれV1~V6誘導として測定が行われます。

これにより、心臓を下側から輪切りにしたような状態で電気刺激の流れる向きと大きさが調べられるわけです。

このとき、V1~V6誘導のいずれかの波形で、心室の収縮を表すQRS波のうち、上向きのQ波と下向きのS波がほぼ同じ大きさになる誘導が見られるでしょう。これを移行帯と言い、電気刺激が左右両脚からプルキンエ線維へ流れていく箇所について、移行帯に当たる電極の近くにあることを意味します。

すなわち、心臓の底に当たる箇所が移行帯の見られる電極付近に位置していることであり、これにより心臓の位置が把握できるわけです。

心臓長軸の時計回り・反時計回りの意味

移行帯がV3~V4誘導で見られれば、心臓の位置は正常とされます。移行帯がV5~V6誘導にあれば、心臓が通常よりも左脇下向きに偏っている、すなわち時計回り方向にあり、逆にV1~V2誘導に移行帯があれば、心臓が通常より正面側に偏っている、すなわち反時計回り方向にある、ということになります。

傾向としては、肥満体型であれば時計回り、やせ型であれば反時計回りの傾向が所見にあらわれます。とくに疾病や持病がなく、他の検査結果と照合して病状が発見されなければ、この所見が出ても病状的に問題ないと言えるでしょう。

まとめ

以上のように、心電図の所見で時計回りおよび反時計回りの結果が出た場合、心臓の位置が通常より左脇下側もしくは正面側に位置しているということを確認し、そのメカニズムについて概略的に見てまいりました。参考になれば幸いです。

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