知っていますか? レーザーメスの仕組み

現在、外科を中心に幅広い分野で使われているレーザーメス。金属の塊である従来のメスとは全く異なる仕組みで出来ています。今回はこのレーザーメスの仕組みと歴史について解説します。

レーザーメスとは?

レーザーの熱エネルギーを用いて腫瘍を焼灼する装置のことをレーザーメスと呼びます。現在、医療の現場で使われている外科用レーザーメスは主に次に挙げる2種類です。

〇炭酸ガスレーザー
炭酸ガス(二酸化炭素)を媒質とする、赤外線の連続派、高出力パルス派を照射するレーザーメスです。炭酸ガスレーザーは、レーザーを照射することで水分が蒸発し、その破壊孔で脱水、収縮、炭化が起きることで、患部の切開あるいは切除をする装置です。

〇YAGレーザー(ヤグレーザー)
イットリウム、アルミニウム・ガーネットからなる結晶に、微量のレアアースを加え、その結晶体を媒体とするレーザーメスです。結晶体の材料の頭文字を取ってYAGレーザーと呼ばれます。

因みにレーザー(laser)は英語ですが、メス(mes)はオランダ語なので、レーザーメスと言う呼び方は日本独自の物です。海外ではレーザーナイフ(laser knife)と呼ばれます。

レーザーメスの歴史

1963年に世界初のレーザーを用いた外科手術が行われました。日本でのレーザーメスの開発は、脳腫瘍の無血的除去を目指して始まりました。動物実験を経て、実用に耐える実用機の開発が行われ、1980年に日本製レーザーメスが実用化されました。

レーザーメスの仕組み

まず始めに、レーザー光の波長と言うのは単一波長です。その為拡散することなく、密度の高い光を一点に照射することが可能です。レーザーメスを用いた手術では、皮膚の一点にレーザーを照射することで、照射部が過熱し、圧力が高まり表皮が裂けることで切開されます。

同時にレーザーの熱の為、血管が固まり出血をごく短時間で止めることが出来ます。この特性を活かし、脳の手術や肝臓の手術など、縫合の困難な組織の手術に用いられます。

出血量が少なくて済む為、輸血量は従来のメスを使った場合と比べて数分の一程度にまで減らすことができ、手術時間も短縮できる為、患者の負担を大きく減らすことが出来ます。縫合を行わない為、術後の痛みも小さくて済みます。

また、手術に用いる器具は直接患者の身体には触れない為、感染症の危険も減らせます。
前述した脳や臓器の手術の他、皮膚科や美容形成外科、眼科、歯科など非常に幅広い分野で用いられています。使用する他の種類のレーザーで限定する場合があり、その特性によって使い分けがされています。

まとめ

今回は、レーザーメスの種類とその仕組み、そしてレーザーメス開発の歴史を簡単におさらいしました。レーザーメスの登場によって手術の時間は大幅に短縮され、患者の負担も小さくなりました。この記事がレーザーメスに対する理解の進展に役立てば幸いです。

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