CT装置の登場から現在までの世代による進化

生体現象測定記録・監視用機器

X線投影は3次元の被写体を二次元の感光体に焼き付ける影絵のようなものでしたが、CTは断層像を連続的に選択することで三次元データとして取り組むことができます。X線CT装置は意外と古く、1968年にイギリスEMI社のG.ハンスフィールドにより発明されました。今回はCT装置の世代による進化についてお話していこうと思います。

第一世代

被写体を挟むようにX線管(ペンシルビーム)と検出器を設置し、対象を平行に走査し、回転により角度を変えた後、引き続き並行走査を再開します。この動作を交互に繰り返し被写体の全周囲を回転して1断面の投影データを得ます。

国内では、1975年に日立メディコが国産初のX線CT装置を開発しました。藤田学園保健衛生大に設置され、対象部位は頭部でスキャン時間は4~5分かかりましたが、非常に画期的な技術として反響を呼びました。

第二世代

走査時間の短縮のために検出器を10~20個に増やし、X線ビームは3度~10度の広がりを持つナロウファンビームを搭載し、回転はファンビーム角度と同角度ごとに行われます。走査時間20秒ほどで完了します。

第三世代

被写体に被さるほど大型で第2世代CTよりも広い30度~50度の扇状X線(ワイドファンビーム)と、300~1000チャンネルの検出器を円弧上に搭載し、回転動作のみで走査します。この検査方法をローテート・ロータート方式と呼び、現在一番使われているCT装置のスキャン機構です。走査時間は2~10秒ほど要します。
日本では、1977年に日立メディコから国内初の第3世代高速型全身用X線CT「CT―W2」を商品化させました。

第四世代(S―R方式)

被写体を囲む円周上に2000を超える検出器を配列し、検出器列の内側でX線管だけが被写体の周囲を回転しワイドファンビームを連続照射して撮影します。散乱線が多いのが欠点。走査時間は2~6秒要します。
1976年AS&E社が世界初のS―R方式の全身用CTを発売し、1978年に旭メディカル社が輸入販売を行いました。

第四世代(N―R方式)

S―R方式の検出器間距離短縮のため、検出器列の外側にX線管を配置し、小さなリング状の検出器を円周上にX線管の回転に同期してリングを章動運動(nutate)させる方式です。EMI社が提案し、東芝がTCT-900Sを開発・発売しました。これにより検出素子数を抑え高分解能を得ることができるようになりました。

ヘリカルスキャン

従来のCTでは高圧発生装置とX線管がケーブルで繋がっていたため連続して回転することが不可能でした。そこで、スリップリング機構を導入し、スキャンしながら寝台を移動することでらせん状の投影データを投影することが可能になりました。被写体は動いてはいけないという常識を覆すスキャン方法で、呼吸や心臓の鼓動といった生命活動を気にせずスキャンできるようになりました。

まとめ

CT装置の医療現場に対する貢献は大きく、それまでのフィルム増感紙系の画像では無理だった三次元のデータを正確に取り込むことができるようになりました。今もCT装置の進化は留まることなく、今後の発展が期待されています。

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