ファイバースコープは胃カメラの進化形だった

診断用機器

【はじめに】
ファイバースコープは、管が自由に曲がるようになっており先端にカメラがついています。また先端に手術器具が取り付けられていて、手術を行うこともあります。
管が自由に曲がることにより、のどや胃または腸を見て病変がないか診察することができるのです。
今回はファイバースコープと胃カメラの関係についてお話したいと思います。

【世界初の胃カメラ、日本で誕生する】

胃カメラができるまで、胃の中を見るために胃鏡というものがあり、昭和の初期ごろ使われていました。しかしそれは鉄の管の中に鏡があるというもので、消化器を突き破ってしまう事故が多発し使用されなくなりました。
世界でも胃を見るための機器が開発されてきましたが、やはり体内に入れる管は主に金属が使われ、1932年ドイツで「軟性胃鏡」が開発されましたが、曲がる部分は全長の1/3ほどで、30度程度しか曲げることができませんでした。

1950年、東京大学第一内科の医師とオリンパス株式会社によって世界初の胃カメラは日本で誕生しました。
胃カメラの管部分は塩化ビニールを使用。先端にカメラがあり、手元で豆ランプをフラッシュさせて白黒写真を撮影するものでした。
そしてそれからも「危険がない」「患者に負担にならない」「胃内壁すべてを短時間で撮影」「鮮明な画像」という理想を追及した結果、胃カメラはより良いものになっていき、広く普及するようになりました。
胃カメラの誕生は診療技術の大きな飛躍であり、当時日本人の死因1位であった胃がんの早期発見に貢献し、胃がんの治療に絶大な効果をもたらしました。

【胃カメラからファイバースコープへ】

1960年代にアメリカでグラスファイバー(光ファイバー)が開発されると、胃カメラに光ファイバーが使用され、「ファイバースコープ」が誕生します。
光ファイバーは曲がっても光を管の端から端まで通す性質があり、医師が直接胃の中をリアルタイムで診察できるようになりました。
ファイバースコープは、その先端に極小のカメラを取り付けることにより、胃以外にも食道、十二指腸、大腸、気管支、胆道など様々な臓器の内部を診察が可能となりました。
そして時代は胃カメラからファイバースコープへと変わっていきます。
その後、ビデオカメラが取り付けられ、画像をモニターに映すことで複数の医療スタッフが同時に患部を見ることができたり、超音波を発信する超音波内視鏡が開発されます。
さらにその後、内視鏡の先に手術器具を取り付け、手術をする「腹腔鏡手術」が行われるようになりました。
ファイバースコープ(内視鏡)は検査や診断のほかにも治療や処置ができる時代へと移行していったのです。

【まとめ】

今では何気なく私たちが診察時などに見るファイバースコープですが、始まりは胃カメラにありました。体を手術で切開することなく体内を見ることができるファイバースコープは医療技術を劇的に進歩させたのです。

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