麻酔器の使用の際、原理を熟知する重要性

治療用機器

麻酔器は現代医療に欠かせない医療機器です。麻酔器から生成された麻酔ガスは、肺から血液に取り込まれ脳に到達し、全身の神経を麻痺させることで患者に苦痛を与えること無く、安全に手術を行うことが出来ます。今回は麻酔器の原理について解説していきます。

麻酔器の歴史

1846年、アメリカの歯科医モートンがエーテルを麻酔薬としガラス球で気化し、吸入させたのが麻酔器のはじまりといわれています。その後、麻酔薬にクロロホルムの使用や持続的に酸素を送り込める麻酔器や、患者の呼気を利用した閉鎖循環式麻酔器が登場しました。日本では1950年に閉鎖循環式麻酔器が発売され、患者にかかる負担を減らし集中して手術ができるようになりました。

麻酔器回路

麻酔器には麻酔ガスを作る「ガス供給部」と、人工呼吸を行うための「呼吸回路部」の2つに分かれています。

ガス供給部

麻酔ガスは、減圧した酸素と亜酸化窒素(笑気ガス)を、気化器で必要な割合の揮発性麻酔薬と混合させることで作ります。

麻酔器の使用は、直接静脈へ注入する場合に比べて、効果が現れるまで時間がかかりますが、麻酔ガスを送りながら人工呼吸を行うことが出来ます。このことから、全身麻酔をかける際は静脈麻酔を使い、麻酔ガスは麻酔維持のために使用するのが一般的です。

呼吸回路部

全身麻酔を行うと呼吸を行うことが難しくなりますので、麻酔ガスを体内に循環させるためだけでなく、患者に対して呼吸の補助を行うために呼吸回路が備え付けられています。

およそ0.8分で体内の血液は一周するため、0.8分後以降から動脈酸素含有量は一気に低下していき、3.2分後には0になります。人工呼吸が出来なければ生命に危険が生じるため、万一のために呼吸器の仕組みを理解しておくことは大切なことです。

新鮮ガスを取り込み、逆流を防ぐ吸気弁から通って、患者に到達します。吐き出された空気は呼気弁から出されて到達しますが、気道抵抗で呼吸困難になるのを防ぐための加圧バッグと、排気のための半閉鎖弁(APL)が前段に配置されています。この回路により患者に常に新鮮なガスが送られるようになります。

まとめ

全身麻酔を行う麻酔科医にとって、麻酔器の原理を理解することは機材管理の上で大変重要なことです。麻酔をかけることや患者の状態のチェックだけでなく、普段使っている機材について十分に知っていれば、とっさの判断による処置にも自信を持って対応できるようになるでしょう。新しい機器を導入する際も取扱説明書を熟読し、使用方法・保守点検・禁忌・禁止行為についてあらかじめ理解しておくことが大切です。

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