人工呼吸器の導入の条件と目安となる正常値

生体現象測定記録・監視用機器

人工呼吸器の役割は、酸素化の改善や、肺胞の換気における維持と、疾患や炎症による障害がある場合の進展を遅らせる為の処置として活用されています。人工呼吸器の導入の条件としては、どのような状態なのか、その目安となる正常値について把握していきましょう。

人工呼吸器の仕組みと必要性

肺が膨らんで胸郭が膨らみ、肺胞内の空気圧が陰圧となって縮小する事で、空気を取り入れる事を、吸気として呼び、数値の目安は「大気圧>肺胞の内圧(-1cmH2O)」となります。対照的に胸郭が縮小する事で、肺胞内の空気圧が陽圧となって縮小する事で、空気を吐き出す事を呼気とする、数値の目安は「大気圧<肺胞の内圧(+1cmH2O)」となります。

肺には筋肉がない事から自動運動が行えないので、女子の場合に多いのは、肋間筋による胸郭の変動を行う「胸式呼吸」と、男性や新生児に多い方法として、横隔膜の上下運動によって、肺の運動を行う「腹式呼吸」があります。

呼吸不全に対する種類と正常値

人体に酸素が取り込めない場合のような状態に陥る事が原因で、呼吸不全となる場合があります。その判断する為には、動脈の血液に含まれる酸素の量を、「動脈血酸素分圧」としてPaO2と表示します。

この条件と一緒に、動脈の血液に二酸化炭素がどのくらい含まれているかを、判断する「動脈血二酸化炭素分圧」の事を、PaCO2と呼びます。呼吸の仕組みから、酸素化と換気の状態によって、呼吸不全の対応を行っています。

・1型呼吸不全
PaO2が異常値を示す60mmHg以下の状態に加えて、PaCO2が正常値を示す35~45mmHgの状態です。

・2型呼吸不全
PaO2が異常値を示す状態に加えて、PaCO2が異常値である60mmHg以上の状態です。

酸素化障害を表すSpO2の低下の場合は、吸入酸素濃度を増やす事で対応し、換気不全を表すPaCO2の上昇の場合は、意識レベルが低下する為、低酸素血症に加えて慢性的に二酸化炭素の蓄積のある「2型呼吸不全」であるNPPVには、継続的な補助換気を必要となり挿管人工呼吸器を必要とします。

例えば、喫煙による持続的な炎症の状態を、慢性閉塞性肺疾患としてCOPDと呼びます。血液ガス分析によると、PaO2が55mmHgならば、経鼻酸素投与による対応で十分ですが、pH の値が7.19で7.2以下である場合は、生命の危険を及ばす値となり補助換気が必要となります。

高CO2の血症患者の普段のCO2を、求めるには「受診時のPaCO2-(7.4-受診時pH)/0.0008」での計算となり=54mmHgとなり、この患者の治療には、最終的なPaCO2を54まで改善する必要が認められます。意識レベルの低下が見られる場合の判断には、酸素化に問題があるのか、換気不全があるのかによって、対応しないと、安易に酸素投与を行うと、CO2ナルコーシスと呼ぶ、二酸化炭素が体内に蓄積する意識障害の状態を引き起こすのです。

人工呼吸器導入と正常値の関係

1回換気量と肺活量は患者体重で割った値で、求めます。体重を50kgの場合の1回換気量は、400~600mlとなっています。以下は、パラメーターと正常値と呼吸器の導入基準を表示しています。

1.「呼吸回数(回/分)」の正常値は=10~20回です。導入基準は=5回以下または35回以上となります。

2.「1回換気量(ml/kg)」の正常値は=8~12です。導入基準は=3以下です。

3.「肺活量(ml/kg)」の正常値は=67~75です。導入基準は=10以下です。

4.「最大吸気圧(cmH2O)」の正常値は=75~100です。導入基準は=20以下です。

5.「PaO2(mmHg)」の正常値は=75~100(FiO2:0.21)です。導入基準は=60以下(FiO2:0.6)です。

6.「PaCO2(mmHg)」の正常値は=35~45です。導入基準は=60以上です。

※通常の空気の場合は、FiO2:0.21となり、吸入ガスの60%が酸素となる場合を、FiO2:0.6となっています。

まとめ

正常値や患者の状態を判断する事で、人工呼吸器を、自発呼吸がない重篤な患者さんは、強制換気モードから対応して、徐々に呼吸が出来るようになってきたら支持換気モードに移行して、患者の状態と安全を確保できるように注意深く見守る必要が大事なのです。

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