右心房・右心室に負荷をもたらす症状で見られる心電図の特徴

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心臓疾患の中には、右心房や右心室に負荷を加えてしまうタイプが存在します。そのような症状はどのような仕組みで生じるものなのでしょうか。また、そういった容態にある場合、心電図ではどのように表されることになるのでしょうか。見ていきたいと思います。

心電図の基本

全身を循環し生命活動を維持する血液には、肺から取り込まれた酸素が含まれています。動脈を通る血流によって、酸素が全身に行き渡り、使い切った後は静脈を通って再度酸素供給を受けることとなります。

その動脈・静脈に循環をもたらす動力を発生させるのが、心臓の役割です。心臓を構成する左右の心房・心室が、それぞれ段階的に収縮と拡張を繰り返すことにより、血流が生じます。心臓が絶え間なく行う拍動すなわち心拍は、その役割を果たすのに伴って生じているわけです。

心臓の拍動は、心臓を構成する筋肉・心筋に発生する電気の流れに連動して行われます。その電気反応を電位差として検知することで、心臓の動きや状態を判別する検査法が心電図となります。

心電図検査は、心臓の動作や状態を反映した波形をグラフ上に表す形式によってなされます。グラフの縦軸が心臓の電気反応である電位差の向きと大きさを示し、横軸が時間となります。つまり、心電図波形は検査によって検出される電位差の時間変化を意味するというわけです。

心電図上では、心拍1回が複数の波の集合体として表されます。その波1つ1つが、心臓のどの部分がどのような動きをしているかを示すものとなっているわけです。心拍を構成している波形としては発生順に、P波・QRS波・T波・U波が挙げられます。

P波は、心房部の心筋の緊張過程を表します。続くQRS波は、心室部分への電気的興奮の伝わり方を示し、Q波・R波・S波の複合体です。次のT波は、心室筋の電気的興奮が解除される過程を表します。最後のU波は心拍1回の終了に見られる反応です。以上のような波形形状の判別から、心臓に関しての診断が行われます。

心電図作成に用いられる電位差のデータは、被験者に取り付けられる電極から検出されます。電極の装着位置は主に、左右両手足首4箇所・胸部左側6箇所の計10箇所となり、アースに使われる右足首を除く9つの電極がデータ検知に使用されます。

電極には、両腕を広げた際の右手首・左手首・左足首の電極位置3点からなる3角形の中点に位置する仮想的な不関電極も加えられます。これら計10点が、検査に用いられます。電極2点間を結び付け、その区間に検知される電位差について、心電図を描画する方法が取られるわけです。

電極2点の組み合わせとしては12通りが定められ、これを12誘導心電図と言います。その12通りの誘導は、手足3点+不関電極からなる四肢誘導6通りと、胸部6点+不関電極からなる胸部誘導6通りに大別されます。

四肢誘導はさらに、双極誘導と単極誘導のそれぞれ3通りずつに分けられます。各名称は以下の通りです。

双極誘導:
▼第Ⅰ誘導:右手首と左手首の電極による誘導。左手首方向が+
▼第Ⅱ誘導:右手首と左足首の電極による誘導。左足首方向が+
▼第Ⅲ誘導:左手首と左足首の電極による誘導。左足首方向が+

単極誘導:
▼aVR誘導:右手首電極と不関電極による誘導。右手首方向が+
▼aVL誘導:左手首電極と不関電極による誘導。左手首方向が+
▼aVF誘導:左足首電極と不関電極による誘導。左足首方向が+

胸部誘導に関しては、胸部前面の胸骨右側から左腋下部にかけて、規定された位置に電極が取り付けられます。各取り付け電極と不関電極による6通りの誘導となり、取り付け電極方向がグラフ上の+方向です。胸骨右側の電極から順に、V1誘導・V2誘導・V3誘導・V4誘導・V5誘導・V6誘導、のように表されます。

右心部に負荷が生じるメカニズム

前項の基本的事項を踏まえながら、右心室・右心房に負荷が見られる際の仕組みと心電図の特徴について確認していきましょう。

血液の送受に関係する心臓の器官は、以下の通りとなります。
▼酸素を含んだ血液を肺から受け取る左心房
▼有酸素の血液を動脈に送る左心室
▼静脈を通して酸素が失われた血液が流入する右心房
▼酸素が失われた血液を肺に送る右心室

つまり、心臓の右側に位置する器官は、静脈から血液を引き込み、それに酸素を供給させるべく肺に送り出す部分に相当するわけです。ここに負荷が生じる場合、主な症状としては、右心房拡大・右心室拡大・右心室肥大などが主に挙げられます。

この場合、「拡大」と示されるものは内部容量が増加していることを意味しています。血流が滞留気味となり、その結果として内部の血液量が拡大し、負荷が生じるというわけです。

「肥大」と示されるものは、その箇所の心筋の厚みが増していることを意味しています。何らかの要因によって血流を阻害され、機能を働かせる際の運動量が増加した結果、心筋に負荷がかかり肥大化したというわけです。

それぞれの症状について、要因と心電図の形状は以下の通りとなります。

▼右心房拡大:
静脈血液が流入する右心房の収容量が増大していることを示しています。主な原因としては血液を右心室へ送る過程で何らかの不具合が生じていることが挙げられます。心電図で見ると、第Ⅱ、第Ⅲ、aVF誘導において、P波が通常より高く尖った状態で表されます。

▼右心室拡大:
静脈血液を肺へ送り込む右心室の容量が増す症状です。肺への血流に不具合が発生していることが主な原因として想定されます。心電図上の特徴としては、V1誘導でS波の後に再度R波が現れるrsR’型の反応が見られます。

▼右心室肥大:
肺へ血液を流す右心室の心筋が増加していること症状です。肺への血流を妨げる要因が考えられ、そのために心筋が過剰に働いている状態を指します。心電図で見ると、V1誘導で、S波との通常の比率より高いR波が現れています。また、QRS波からT波へ移行する区間でも、電位差の低下が見られます

まとめ

以上のように、心電図の初歩的な要点から出発し、心臓右部の器官に負荷が生じる症状と、その際の心電図の傾向について確認してまいりました。心臓の容態と心電図を関連付けて把握することで、より精度の高い医療技術に結び付けられると言えるでしょう。

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