脳波計使用時に適用される周波数帯域

生体現象測定記録・監視用機器

脳細胞間の情報伝達に伴って生じる電気反応から、脳の機能や状態を判別する脳波検査。
これを実施する場合、機器が計測する周波数を適切な帯域に定めることが欠かせない条件の1つに挙げられます。何故そうする必要があるのでしょうか。確認していきたいと思います。

脳波の正体

人体を構成する細胞は、生命活動に伴って電気的反応を発しています。ニューロンによって連結する脳細胞も同様です。数千億もの個数に及ぶ脳細胞はネットワークを形成し、相互の情報伝達が脳活動の基となっているわけです。

その脳活動に連動して生じる電気的変化を、電位差として検知し、これを縦方向電位差・横方向時間と設定した座標上に表すと、波形すなわち脳波として描画されます。時間経過に伴い、電位差の大きさと向きが変化することから、波形となって表されるわけです。

検査では、脳内の電気的反応を示す電位差の変化すなわち脳波から、脳の機能・状態・病態の有無について調べることとなります。

脳波の種類と、それぞれの周波数

脳波は、周波数の範囲によって幾つかの種類に分けられます。周波数とは、1秒間で波の数すなわち振幅が何回生じているかを意味する物理量を指し、単位はHz(ヘルツ)となります。

研究により現在では、主に4種の脳波が検査対象として有効であると見做されています。周波数が低いものから順に挙げていくと、次の通りとなります。
δ波(0.5~4Hz)→θ波(4~8Hz)→α波(8~13Hz)→β波(13~30Hz)

健常な成人が覚醒・開眼時、安静状態にある場合、その脳波はα波が主体となります。深いリラックス状態もしくは浅い睡眠状態に入るとθ波が発生し、眠りが深まるとδ波が見られるようになります。これらα波より低い周波数について、一般的に徐波と呼ばれています。

覚醒時、緊張状態にある場合には、α波より高い周波数のβ波が生じます。そしてさらなる興奮状態に至れば、周波数30Hz以上のγ波が現れます。しかし一般的な脳波検査において、γ波に関しては検査対象として扱われていません。

これらの周波数からなる脳波が、検査中どのように生じているか調べることによって、脳の状態や機能、病状について判読可能となるわけです。

周波数帯域を設定する機構

脳波を観測する手段としては、患者さんの頭部に電極を取り付ける手法が一般的です。全21箇所に及ぶ電極の配置に基づいて、様々な誘導法すなわち電位差を検知する区間が設定されることとなります。現在のデジタル脳波計ではモンタージュ機能により、1回の検査で全ての誘導法に対応することが可能となっています。

電極から検出される電位差データは、脳活動に由来するものばかりとは限りません。環境中の電磁波や、脳以外の生体反応に伴う電気など、いわゆるノイズに相当するデータも入り込むことになります。それらノイズに対処し正確な測定を実現すべく、脳波計には様々な機能が組み込まれています。そのうちの1つが周波数フィルタです。

周波数フィルタとは、検出データの周波数の幅を設定するための機構です。脳波検査に用いられる周波数は、δ波の下限と目される0.5Hzからβ波の上限に相当する30Hz付近までとなります。その0.5~30Hzの周波数帯域が限定的に測定されるよう、フィルタを設定する必要があるわけです。

機種の違いにより、脳波計に内蔵されるフィルタの種類は異なりますが、全般的に用いられているタイプはハイパスフィルタとローパスフィルタです。

ハイパスフィルタは、設定値よりも高い周波数であれば透過し、低い周波数であれば減衰させる特徴を持っています。これにより、脳波検査に用いる周波数帯域の下限を決定することができます。

ローパスフィルタは、設定値以下の周波数は透過、設定値以上は減衰という特徴を持ちます。このようなフィルタ機能を用いて、周波数帯域を指定し、その範囲外の周波数をノイズとして取り除くことが可能となるわけです。

まとめ

脳波計を扱う際には、電極が検知してしまうノイズ由来の周波数を取り除くことが必要です。検査で扱われる周波数帯域は脳波の種類により予め指定されていると言えます。その範囲に併せて、周波数フィルタを適切に設定し、ノイズ起因の周波数に対処する仕組みとなっているわけです。

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