心電図に見られる上室性期外収縮の変行伝導とは?

生体現象測定記録・監視用機器

心臓の状態を測定する医療測定器である心電図。その心電図に「変行伝導」と呼ばれる現象が起こることがあります。では、一体「変行伝導」とはどのような状態なのでしょう。今回は、特に上室性期外収縮に起こる変行伝導について解説します。

変行伝導について

心室内変行伝導とは、心臓の心室内の電気的興奮がまだある状態で、次の電気刺激が心室に入ってきた際に生じる現象です。初めの電気的興奮の途中で心室が収縮状態にある時、心筋は新たな電気刺激に反応できない状態が起こります。

そのため、新たに入ってきた次の電気的影響は心室内で遅延した状態となり、結果として心室内で電気刺激の伝播が変行した状態になります。心電図では、QRS波の幅が通常より広くなっている形状で表されます。

重要なポイントは、心臓に備わった機能的な障害で起こる現象であり、ある条件下で想定できるQRS波の変化(幅狭い波形が幅広い波形に変わる)です。

ある条件下とは?

変行伝導が生じる条件下とは、どのような条件なのでしょう。以下に示します。

●心房細動(AFもしくはaf)に伴い生じます
●上室性期外収縮、主に心房性期外収縮(PACもしくはAPC)に伴い生じます
●上室性頻拍に伴い生じます

上記の場合で、変行伝導は起こりうる可能性のあるものです。主に上室性期外収縮のものがよく知られていますので、下記にて説明します。

上室性期外収縮(主にPAC)に伴う変行伝導とは?

普通PACは、刺激伝導路の関係上、幅の狭いQRS波が測定されます。一般的に心電図を見ていると、PACはよく測定される不整脈です。しかし、先行P波が伴っているのに、稀に幅広いQRS波の出現が確認されることがあります。これが、PACに伴う変行伝導が生じている状態です。

なぜ幅の広い右脚ブロック型のQRS波が見られる状況になるのかは、上室性期外収縮の興奮が、どうにか心室に伝わったものの、左脚は通れる、右脚は不応期というタイミングにあたると、上述の波形が現れます。

ちなみに、不応期とは細胞などが興奮を生じたとき、その直後に続いた第2刺激には興奮が起こらない短い期間を示します。この不応期は心房筋が一番短くなっており、早い拍子の刺激には反応可能です。

非伝導性の上室性期外収縮の場合

例示するなら、ある心電図を見ているとしましょう。1回目と2回目のPP間隔が洞周期で
すが、次のQRS波の遅延が見られるとします。これは、洞不整脈にしてはPP間隔が空きすぎる洞機能不全が考えられますが、このとき心電図にP波が存在していないかをよく観察しましょう。

3回目のT波の終末部分の波形がおかしいなどの所見がある場合、実はここにP波が重なっているのです。当然心室の活動ではT波、P波は心房の期外収縮なので違う部位での活動ですが、心電図上では、心房と心室の活動を同じ記録用紙に書かれますのでタイミング次第では、このように重なり分かりづらくなります。

これを伝導されない上室性期外収縮(非伝導性上室性期外収縮)と言います。興奮が伝導されない状況をブロックといいます。

まとめ

今回は、心電図上に観察される上室性期外収縮の変行伝導についてお伝えしました。変行伝導は他の条件下でも生じます。またある波形と異なる波形が重なっている場合もありますので、経験と観察眼が求められます。

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